欧州王者の壁は厚い
そして、この試合で最初に素晴らしいパフォーマンスを見せたのはFIFAのサーバー。安定した動画を提供してくれました。
試合は攻めるシティと守るレッズの構図。この0-0の時間を長くしてこそ、勝利の目が出てきます。
そして、それを可能にしたのは西川周作選手、アレクサンダー・ショルツ選手、マリウス・ホイブラーデン選手という、Jリーグ歴代最強クラスの最後の砦でした。
この守り方ができるのはJリーグでも浦和だけです。Nボックスのジュビロ磐田も、三笘薫選手がいた川崎フロンターレも、これはできません。
ショルツ選手はインタビューで「CLに出場するなかで、自分はELレベルだ、CLレベルのチームは目指せないと感じた」と語り、だからこそ文化的にも興味のあった日本に来てくれたと言っていますが、僕にはそうは見えません。(本人が言っているからそうなんでしょうけど)
しかし、シティも抜群に強い。
難しいことはしていないんです。全ての判断が早くて正確。シンプルな方程式を脳の処理速度と精度で解いていくようなフットボール。だからこそ、ゴール前に人垣を築く以外の対処法がない。
浦和の選手が奪いに行くのを、あざ笑うかのようにフリーの選手を生み出しては、つないでいきます。
それでも、浦和の選手はどこか楽しそうで、僕も見ていて楽しかったです。「すげぇ、強え」と驚くばかりだったミラン戦とは違い、「そんなの織り込み済みだよ。それでも細い細い勝利の糸を手繰り寄せるよ」という、奇跡を起こすために1秒1秒の勝負を繰り返す姿にはワクワクしました。
そんななかで、前半終了間際にオウンゴールで先制を許します。かなり勝負は厳しくなりましたが、それでも崩し切られた場面がなかったというのは、ひとつ自信になりました。
そして後半。点を取らないといけないレッズは前に出ようと挑戦しました。結果、2点を失い0-3で敗れました。
〇【Inside Reds】vs.マンチェスター・シティFC/FIFAクラブワールドカップ2023に臨むチームに密着 Vol.4[浦和レッズ公式チャンネル]
シティはたとえ前半が0-0でも、徐々に攻撃の比重を増やしていって、どこかで点を取れたらと、焦りはなかったと思いますが、その1点が前半に決まってしまったのが痛かった。
まして、レッズの選手はモチベーションで満身創痍の体に鞭を打っているような状態です。
それでも後半の終盤になると、ショルツ選手が中盤までボールを持ち運びゲームメイクしたり、中島翔哉選手やリンセン選手のような欧州でプレー経験がある選手が、敵陣でもボールを持てていたのを見ると、このシティ戦は全ての選手に得難い経験値をもたらしたのではないかと思います。
経験値でいうと、スピードやパワーというアスリート能力の違いという先天的なものも、世界の一流を集めるクラブとJリーグのチームでは違うということも改めて感じました。
僕は大学時代、50m走7.1秒の超鈍足で、相手は6.1秒とかザラにいて
「お前、簡単に抜かれんなよ!!」
と怒られて
「お前ら自分より1秒速いヤツとマッチアップしたことあんのかよ! お前にとっての5.1秒だぞ! 止められんのかよ!!!」
と、逆ギレしながら試行錯誤していたのですが、有望な選手が次々と海外に旅立つなか、僕の愛するレッズが世界に挑むというのは、あの頃の僕が挑んできた戦いの遥か延長線上にあるように見えて、それに本気で挑んでいる姿に、悔しさと今度こそロマンを感じることができました。
3位決定戦。相手はエジプトのアル・アハリ(アフリカ王者)でした。
エースのモハメド・サラーがいないことを除いては、エジプト代表に近いメンバーで助っ人外国人もいます。
ほとんどの代表選手が海外組の日本ではもう生まれない、2007年のレッズのようなチーム。
今までは対欧州王者という楽しみの一点でしたが、浦和が世界に挑むということに新たなロマン、あの頃の自分たちのようなクラブと戦えるという喜びを感じました。
アルアハリは強く、レッズも素晴らしい戦いを見せました。
今シーズンのハイライトのようなカンテの理不尽なゴール。2点差を追いつく粘り強さ。PKを止めて勝利の可能性をつなぎ止めるキャプテンの西川選手。なんで出られているのかわからないけど、相手のハイプレスを高い位置でのヘディングで無効化する酒井選手(いや、ほんとに人間ですか?)。
最後まで声を出して一緒に戦うサポーター。ボロボロの体で最後まで戦い抜いた選手たち。
今年初めて日本代表に選ばれて、誰よりも過密日程を戦い抜いた伊藤敦樹選手や、怪我を乗り越えて毎年のことながら今年も一皮剥けた感がある明本考浩選手は、次のクラブW杯のときには海外に移籍しているかもしれないですね。
そんなことを考えると涙が出てくるような一年の集大成でした。
2025年には再びレッズがクラブW杯に挑むことが決定してます。
今度こそ、ロマンだけを感じる大会にしたい。
そのためには「俺たちのレッズは最強なんだ!」と胸を張って言える、全Jリーグサポーターから「レッズならやるかもしれないぞ!」と思われるよう、リーグ優勝をして世界に乗り込みましょう!!
そして、世界を揺らしましょう!!
すでに僕もマネージャーとの交渉に入っております!
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2023年、『カカロニ・すがやの“熱”Football Watch!』を読んでいただき、ありがとうございました。後編は年明けの1月8日(月)に配信予定なので、よかったら読んでください!
それでは、皆さん良いお年をお迎えください!