今年11月のアメリカ大統領選に向けた共和党の指名候補争いで、トランプ前大統領が共和党の指名候補となる見通しとなった。トランプ氏と言えば2021年1月に起こった「アメリカ合衆国議会議事堂乱入事件」を思い出す。2023年にフォックステレビが放映した監視カメラの映像には、これまで伝えらえてきたニュースとは全く違う雰囲気の様子が録画されていたのだ。映画評論家・瀬戸川宗太氏が「アメリカ合衆国議会議事堂乱入事件」の真相に迫る。
※本記事は、瀬戸川宗太:著『JFK暗殺60年 -機密文書と映像・映画で解く真相-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
連邦議事堂内の監視カメラに映っていたのは?
2021年1月6日、トランプ大統領の落選を知った支持者たちが、不正選挙に抗議するために全国からワシントンに集まり、大集会を開いた日の出来事。集会を終えて連邦議事堂に向かった群衆の一部が建物内に侵入し、トランプ支持者が銃で撃たれ死亡するなどしたため、バイデン政権は、この行動を民主主義に対する攻撃として非難し、トランプ大統領の演説が原因だったかのような宣伝を始めた。
さっそく、下院に事件調査の特別委員会(1月6日委員会という)が設けられ、事件の調査が進められたが、議事堂内に入った群衆約1000名が起訴されたにもかかわらず、政府や民主党側が主張していた、トランプ大統領の扇動を証明する証拠は1つも出てこなかった。またトランプ支持者によるクーデターといった極端な言い分を、証拠立てることもできなかった。
それどころか、2023年になってバイデン政権や民主党の主張とは全く相反する事実が、驚嘆すべき映像によって白日の下にさらされたのである。保守系フォックステレビの超人気司会者タッカー・カールソンの番組で放映した映像だ。
事件が起きた当日の連邦議事堂内の監視カメラには、民主党系のテレビが繰り返し流していたトランプ支持者と警察が激しく衝突する場面とは、全く違う雰囲気の様子が写されていた。
まず、議事堂内に入った人々が、まるで見学ツアーのように静かに行動している姿が印象的で、民主党系テレビが盛んに流していた暴力的イメージとは明らかに異なる。一部のトランプ支持者の過激な暴力を、CNNなどが意図的に流布していたので、検察側がテロと判断し起訴した人々の平穏な行動を見て、驚いた視聴者が多かったという。
なかでも、連邦議事堂乱入を扇動した代表的人物として知られるジェイコブ・チャンドラー(バイソンの角をあしらった毛皮を着た写真などで有名な男)が出てくる議事堂内映像は、驚くというよりショッキングといったほうが適切な表現だ。
なんと、ジェイコブは複数の議事堂内警察官に先導されて、例のバイソン角の姿のまま廊下や部屋を歩き回っている。警察官たちは彼を案内しているとしか見えない。「これはいったいなんなんだ」というのが率直な感想である。
ペロシ議長が監視カメラの映像公開を拒んだ理由
「フォックスニュース」が流したのは、監視カメラの一部に過ぎず、他にどんな場面があるのか興味津々だが、問題なのは、事件当日の同種映像が大量にあるにもかかわらず、なぜ長期間にわたって公表されなかったかである。理由は簡単で、公表前まで下院議長を務めていたナンシー・ペロシ民主党議員が、公にするのを拒否していたせいである。
それが今回のようになったのは、中間選挙の結果、下院で共和党が多数を占め、議長が共和党のマッカーシー議員に交代し、同新議長がフォックステレビに放映を許可したからだ。
ペロシ元議長には、もう一つ疑惑の行動があるので紹介しておく。彼女は1月6日当日、ドキュメンタリー作家と称する自分の娘にカメラを持たせ、議事堂内を撮影させている。同議長が側近を連れ歩くのを撮影している娘の姿を、議事堂内の監視カメラがとらえていた。この映像も公になっている。なんのための撮影なのだろうか。
この不審な行動は、ペロシ議長がトランプ支持・不正選挙糾弾の大集会がワシントンで開かれるのを知りながら、連邦議事堂の警備体制をなんら強化しなかったのと合わせて疑惑を呼んでいる。
なによりも不可解なのは、スティーブ・サンド議事堂警察署長が警備体制の強化を要請したにもかかわらず、彼女はなんの対策を講じなかったばかりか、事件後、同警察署長に責任を負わせクビにしたことだ。そのときの真相を、スティーブ・サンド元警察署長がタッカー・カールソンに詳しく話しているが、そのインタビューの放映をフォックステレビは中止にした。
最近のFBI内部告発でわかってきたのは、議事堂乱入時に、FBIが配置した覆面捜査官、協力者の人数は、当初は数名ないし数十名と見なされていたが、地方支局から動員された者を含め、100名以上に及ぶのがはっきりしてきた。いくつかの写真や映像では、FBIと関係のある人物が議事堂侵入を煽っている姿も確認できる。
このような新事実の発覚は、ペロシ議長が、議事堂内監視カメラの映像公開を頑なに拒んだ謎を解く手がかりとなる。また、議事堂内に侵入したトランプ支持者を起訴するため、FBIの地方支局が地域の被疑者を確認しようと監視カメラ映像を見ようとしたが、FBI本部はその要請に制限をつけ、事実上拒否した。
これもペロシの場合と同じ理由なのではないか。監視カメラ映像を公開すれば、FBIの覆面捜査官、協力者たちが、現場に大勢にいたのが一目瞭然となるからだろう。そう考えると、1月6日の出来事は、むしろ民主党側が仕掛けた「反乱」事件だったのではないか。そのような疑念が生じてくる。
それを裏づけるかのごとく、タッカー・カールソンがいつもの鋭い舌鋒で、議事堂内の監視カメラ映像を解説した「フォックスニュース」は、全米で大反響を呼び、驚異的な視聴率をあげた。
さらに同番組の出演直後、タッカーがフォックステレビを辞めたのは、保守のなかにも反トランプ派が隠然たる勢力を占めている現実に加え、連邦議事堂乱入事件の持つ闇の深さを知らしめたともいえよう。