「4-2=無限大」という図式が成立しなかった理由

そして、出番。

1曲目は、もはやゆづはなのユニット曲としてファンのあいだでは認知されている『アダムスキーじいさん〜ハムとみかん〜』。アメフラっシのかわいいも、かっこいいも、おもしろいも、「すべて2人で見せつけてやろう!」と意気込んでいたゆづはな。いささか緊張の色は漂っていたが、力強いパフォーマンスだった。

しかし、会場の空気はけっしていいものではなかった。

フェス形式で行なわれた今回のイベント。午前11時からの回のトリを務めたのが2人だったのだが、客席はほぼ満員のお客さんが残ってくれていた。お目当てのアイドルの出番が終わってしまったら、もう帰ってしまってもいいはずなのに……まさにそこが落とし穴だった。

MCコーナーで客席を煽るも、拍子抜けするぐらいお客さんの反応が悪い。

そう、ここに残っているお客さんの何割かは、終演後に行なわれる他のアイドルたちの物販や特典会を待つために、ここにいるだけだったのだ。中にはスマホをいじりながら、まったくステージを見ていない人もいた。

この会場は着席での鑑賞がルールなので、熱心なアメフラっシのファンはあえて後方の立ち見エリアからコールを送っていて、その分、客席の熱量が低めになってしまった。思わぬアウェー空間がステージの前に広がっていた。

なんとか、この状況を打破しようとした市川優月はさらに煽りまくるが、どうしても空回り気味になる。持ち時間はわずか25分。アウェーであることに気づいたときには、もう残り20分を切っていた。ここからのリカバリーはかなり難しい。

小島はなも焦りまくったのか、途中で水を飲むときに間違えて市川優月のボトルに手を出し、後半はMCも嚙みまくり状態。完全に会場の雰囲気に飲まれてしまっている。

この連載でも触れてきたように、彼女たちは国立競技場のステージに立ったり、ももクロのドームツアーに帯同したり、と得難い体験をたくさんしてきたが、逆にこういう小さなステージでの危機的状況は、そんなに直面してこなかったのかもしれない。

いや、あったかもしれないが、そのときは横に愛来と鈴木萌花がいた。

この日のセットリストはアメフラっシの楽曲がメインとなっていたので、今日はいない2人の分も、ゆづはなが歌い、踊らなくてはいけないし、MCがグダグダになってしまっても、自分たちでなんとかしなくてはならない。

けっして勢いだけで上がってはいけないステージだったのだ。

それでも会場の隅で見学していたアイドルたちは「すごい……」と圧倒されていたし、けっして悪いパフォーマンスではなかったのだが、どこかで「4-2=無限大」という図式を期待していた分、「4-2=2」という当たり前の景色に物足りなさを感じてしまったのかもしれない。「ゆづはなのポテンシャルはこんなもんじゃないのに」と。

それはきっと、アメフラっシの衣装を着て、ステージに立ったことも大きい。

あまりにも4人でのイメージが強い衣装なので、否が応でも2人の不在が気になってしまうのだ。

個人的には、それこそTシャツとデニムでもいいから、アメフラっシの衣装とはまったく違うものを着て「ゆづはな」であることをアピールしたほうがいいんじゃないか、と思っていた。それを運営チームに投げかけると、こんな言葉が返ってきた。

「もちろん、そういうやり方も考えました。絶対に彼女たちも楽ですから。でも、それって“逃げ”じゃないですか? あんまりよくないですよねぇ~」

周りの大人たちも、あえて厳しい状況を作ってくれていた。

それはこのステージに賭ける2人の意気込みを知っていたからだろうし、期待の裏返し。もっといえば4月以降に控えている単独ライブ、そして、さらにその先にあるアメフラっシの近未来を見据えてのこと。だから、この日のステージで失敗しても別に構わないのだ。その経験を直近の単独ライブで活かしてくれれば、トータルではプラスになる。しかし、はじめて2人だけでのステージに臨んだゆづはなは、そこまで頭が回っていなかった……。