仕事の区切りは中途半端なところにする

家での仕事が長期間の日常になったとき、ルールの転換を求められる。在宅ワークの「フェイズ2」である。

「フェイズ2」のコツは、仕事とプライベートを切り分けることではない。仕事をプライベートに溶け込ませ、自宅での日常の一部にしてしまうことだ。たとえばこんな感じ。

・格好は何でもいい。
 パジャマで一日じゅう過ごせるようになって、ようやく在宅ワーカーの仲間入り。

・子供やペットが乱入してきたら、ひと休み。
 明日できることは明日に回せ。往復の通勤時間分はさぼっても問題ない。

・テレビも、ネットも、音楽もOK。
 下世話な情報が目や耳に入ってくる環境のほうが、いいヒントが見つかる。
 安藤優子さんが黒柳徹子さんに近づいていることに気付くまでテレビをつけっぱなしにしろ。

・WEB会議にはお気に入りのアイドルやタレントの写真を表示しよう。
 見慣れたおっさんおばさんの顔のアップなんか、誰も見たくない。

・仕事の時間を決めても、どうせ守れないからストレスになるだけ。
 1時間おきのストレッチは、やがて1時間おきのツイッターに変わる。
 在宅ワークとは人間の弱さを認める過程である。

以上が在宅ワーク歴25年からのアドバイスである。異論は認める。

そんなんじゃ仕事できるわけないよと思うかも知れないが、大丈夫。意外と人は追い込まれれば何とかする。決められた時間に規則正しくミッションをこなすより、追い込まれた火事場のほうが優秀なパフォーマンスを発揮する場合がままある。それも人間の能力であり、むしろ追い込まれた状況を作るために、ゆるいルールにするべきなのだ。

もうひとつ個人的に会得した、とっておきのコツを最後に伝授しよう。

それは区切りのいいところで仕事をやめないこと。中途半端に仕事を残した状態で、翌日に持ち越す。

なぜかというと、区切りよく終わらせてしまうと、翌日あらためて仕事を開始するまでのハードルがおそろしく高くなるからだ。ネットなんぞを見始めて、仕事に取り掛かるきっかけを失う。

一方、中途半端なところで終わらせておけば、翌日のリスタートがしやすくなる。やり残しを再開したいという気持ちがモチベーションになり、一夜おいて前日の仕事を冷静に見直せるメリットもある。

これが「おひとり道」の末にたどり着いた、ダメ人間の在宅ワーク最大のコツである。

 

独身中年息子による介護奮闘記。BEST T!MESでも好評を博した「母への詫び状」が、ペンネームだった著者が実名を明らかにし、「介護幸福論」として再スタート。著者は“王様”として業界に名を轟かす競馬ライターの田端到さん。記憶の糸をたどりながら6年間の日々、そこで見つけた“小さな幸せ”を綴っていきます。