サッカーボールに国境はない
アメリカのどこかを経由してサンパウロのグアルーリョス空港へ。アメリカで出会った同世代の旅に慣れたノルウェー人(だったと思う)二人組が、空港内では僕の面倒を見てくれて、ご飯も一緒に食べたりと、さっそく人の力を借りて無事ブラジルへ到着。

グアルーリョスからレシフェまでの飛行機はまだ時間があるので、ノルウェー人とサッカーをしました。空港で。
なぜそんなことになったのかというと、原因は僕にありまして。この旅の間、ずっと片手にビニール袋に入ったサッカーボールを持っていたのです。
余談ですが、これが功を奏してか、結果的に、僕はブラジルで危険な目にはほとんど遭っていません(犯罪慣れしている、いわばプロの窃盗者であるブラジル人にとって、ビニール袋にサッカーボールを入れている僕は、「足速そうなのに、お金持ってなさそう。盗むにはコスパが悪い」のだそうです。確かに)。
ノルウェー人たちとボールを蹴っていると、知らないブラジル人二人組がインターセプトをして「来いよ来いよ!」と、手をこまねいてきます。
なんだこの状況! ナイキのCMかよ!!
日本ではあり得なさすぎる状況でしたが、ブラジルvsノルウェー・日本組のサッカー対決が始まりました。そして、数分後……普通に警備員に怒られて、試合は終わりました。
ブラジル人たちは「オブリガード!(ありがとなー!)」と反省するそぶりもなく、とあるキオスクに帰っていきました。いや、あんたら勤務中かい!!! 店をガラ空きにしてサッカーすんなよ!!

そんなことがありつつ、ノルウェー人たちと別れてレシフェ行きの搭乗口へ。日本人も何人かいますが、突然、日本人が慌て出しました。
「おい!! 搭乗口が突然、勝手に変わってるぞ!!」
「なんでアナウンスしないんだよ!」
ブラジルの雑さに、みんなで先行きの不安を抱えながら、大移動。そんなこんな、24時間の初体験だらけの旅を終えて、レシフェに到着したのでした。
空港からは正真正銘の一人です。僕は、急に怖くなった心を奮い立たせ、タクシー乗り場へ。カタコトの英語と、日本で印刷してきた地図をドライバーに見せて、ドミトリーへ向かってもらいました。
ラジオからはサッカー中継。そして、街にはほとんど人が歩いていません。実はその日、その時間はW杯の開幕戦、ブラジル対クロアチアが開催されていたのです。
僕も早く宿に到着して見たいところですが、なかなかタクシーが宿に着きません。ぼったくりかとも思いましたが、どうにも本当に迷子っぽい。
ドライバーがラジオを止めて、無線で道を尋ねます。向こうからも返答が。しかし。宿につかずグルグル。何度も無線で尋ねますが、一向に辿り着きません。僕は地図を手に取り、無線から聞こえるポルトガル語を一生懸命、聞き取ろうとしました。そして、なぜたどり着けないのかわかりました。無線の向こうでずっと、
「マルセロがオウンゴールした!!」
と言っているのです。
こっちが道を聞いているのに会話にならないのです。僕とドライバーは諦めて、海沿いの屋台でW杯を見て、ハーフタイムにやっと宿に辿り着きましたとさ。

さあ、これが僕の3大会、40日、21試合観戦の始まりの日です。
……すべてはこの日から始まったんですね。そして、それは2026年の北中米大会にも続いている道です。共に道を歩む仲間が増えていくとうれしいですね。皆さん、ぜひよろしくお願いします。
次回の『カカロニ・すがやの“熱”Football Watch!』は、10月28日(月)更新予定です。お楽しみに!!
