和のモチーフ

高野:漂ってくる雰囲気の方がすごいですもんね。でも、これも確かに、当時見るより時間経った今、見るからより奥ゆかしいのかもしれないし。確かに阿南さんの絵がこれからずっと残っていって、もっと奥ゆかしさが増していくっていうことですよね。木に描いているからより楽しめそうですね。

阿南:やっぱり、時代性というのを入れるために、そのモチーフは可愛らしく、キャラっぽくすることによって、平成、1990年代とか、『ポケモン』とかマンガの歴史がありますけど、そういうものの中で育った作家の作品に仕上げたいので、モチーフはかなりキャラっぽくしてます。

――阿南さんの内面と作品が凄くリンクしているというのがわかりました。かなりきっちりとされているタイプですか?

阿南:いや、今だけです(笑)。

――すごくきれいに整然とされていて。和室もそうですし。ちなみに洋室で描かれていた時も、描く時は床に座るようにして描いていたんですか?

阿南:洋室の時は、椅子に座るタイプでした。

――では、場所に合わせて描いているんですね。

阿南:日本画の描き方としては床置きなんですよ。日本画は画材が垂れちゃうんで。だから、これからは、水墨画や書道のような床置きで描くスタイルに近い感じにしたいなと。

高野:絵の具を垂らす時は、どうやられてるんですか?

阿南:垂らす時は、立てかけて垂らしますね。受け皿になるものを下に置いて、ボトルで絵の具を垂らしていくという形です。

高野:垂らす時って、どこにどう垂れていくかわからないですよね。

阿南:細かくはできないですよね。

高野:ですよね。偶然性みたいなものも面白いですよね。和のモチーフは昔からお好きだったんですか。

阿南:そうですね。好きですね。ただ、それにこだわってはない感じですね。モチーフは身の回りにあるすべての物事、人も動物も全部入りますね。

高野:自分の心に刺さったものをモチーフにするんですね。

阿南:そうです。

子供の頃に受けた作品の影響

――自分が影響を受けた人とか、ものとかってありますか? 自分の作品、画風に強く影響を受けた人は。

阿南:さっき挙げた長谷川等伯とか、絵と美術以外で言うと、小説ですが吉川英治の『宮本武蔵』を小学校4年生の頃に2、3周ぐらい読んでたんですよ。おばあちゃん家にあったのを借りて読んで、そこで武道とか、日本の精神性がすごい好きになって、そこから剣道を始めたりしたんですけど。

高野:すごい、かなり大きな影響を受けたんですね。でも、渋いですね(笑)。

阿南:はい、友達に宮本武蔵がって言っても、話があんまり合わないですよね。それから、小学5年生の頃に、親から好きな本を買って読みなさいと言われて、選んだのが『朝の論語』という本で。

高野:へぇ! そういう古いものに興味があったんですね。

阿南:好きだったんでしょうね。だから、全く友達と話が合わなくて大変でしたね。めっちゃ浮いてました。高校生の時が一番クラスで浮いてましたね。部活の人たちとは喋ってたんですけど。

――クラスの人と話さなくても平気だったんですか?

阿南:別に平気でした。

高野:ブレてないですね。

阿南:僕、地元は福岡なんですけど…。

高野:一緒です、僕も福岡です。

阿南:マジですか!

高野:僕は、福岡の久留米です。

阿南:本当ですか、僕は志免町っていうとこで。福岡空港をはさんで福岡市の反対側です。

高野:そうですかー!

阿南:僕、浪人中に久留米ラーメンのお店で働いてました。久留米、めっちゃ近いじゃないですか。

高野:近いですね。