国民が知らない消費税のカラクリ
新保 では、今回のような危急存亡のときに、ラジオ・テレビを含めて、マスメディアの報道がどうあるべきか、どう正しく伝えていくべきか、ご教示いただけますでしょうか。
大石 私は、事実をちゃんと国民に伝えるということが、メディアの最大の役割だと思っています。ところが、その事実を伝えるという部分についておろそかになっていることが問題だというように考えています。たとえば現在、消費税は国の分だけで約19兆円ぐらい入ってきているんですね。社会保障に使っているお金は34兆円ですから、当然、消費税だけでは間に合わないんですよ。
新保 確かに、間に合いませんね……。
大石 自民党の有力な先生も、「消費税は全て社会保障に回している、その重要な財源なんだ」と言うわけですが、消費税も法人税も所得税も、実は1つの財布の中に入っているんです。それらがまとまって34兆という社会保障の財源になっているわけですから、19兆しかない消費税が「社会保障に全額回っているから社会保障財源なんだ」っていうような言い方は、おかしいですよね。消費税も回っているし所得税も回っているわけですから。そこらが回らないと社会保障の財源にならないわけです。ですから、消費税が社会保障の財源だと言うんだったら、法人税もそうでしょうし、所得税もそうですね、と言わなければいけません。
新保 なるほど、とてもわかりやすいです。
大石 それから、もうひとつ。今、所得税の最高税率は45%なのですが、以前は60%だったんです。それを下げてきたが故に、過去30年間で所得税・住民税の減収額はなんと累計で275兆円になっているんですよ。これは減税分です。つまり、30年間にわたって300兆円の法人税減税と所得税・住民税の最高税率を下げるための減税が275兆円行われてきて、一方では庶民からの究極の大衆課税である消費税を約400兆円取ってきた、というわけなんです。
新保 なんと、すごいカラクリですね。
大石 つまり、言い方を変えると、「消費税は、法人税減税や所得税の最高税率を低減するために導入された税金だと」こういう言い方すらできるんですよ。これは社会保障の財源だなんていうような話に全然なってないじゃないですか。メディアは、こういうことをちゃんと知らせないとダメでしょう。予算書を見たらもう簡単に分かることなんです。分かるんですが、これを国民の皆さんに知らせていない。国民の皆さんが知るところとなっていないんですね。主権者が主権者として扱われていないと言ってもいいのかもしれません。
新保 知らないことばかりで、まさに目から鱗です。メディアの暗部、そして本来のあるべき姿など、よく理解できました。単に、私が経済に弱いというだけではなさそうです……。次回は、コロナショックにともなう、我が国の変わるべき姿について、くわしくお聞かせください!
大石 久和(おおいし ひさかず)
1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振った。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。 ※『ニッポン放送』HPより転載
『フリーアナウンサー・新保友映の「あの人に会いたい!」』は次回5/28(木)更新予定です、お楽しみに。
所属:B-creative agency (http://bca-inc.jp/)
出演:『大石久和のラジオ国土学入門』(ニッポン放送) https://www.1242.com/kokudogaku/