新型コロナウイルスの感染拡大により、日本もまた大きく揺れています。そんな状況下で問われているのが「日本企業」の進むべき道。果たして日本は欧米型の「個人主義」を推し進めるべきか、あるいは本来の“助け合いの精神に立ち戻るべきか、その決断の時が迫っています。

そこで今週も、建設省(現国土交通省)に入省後、道路局長などを務め「道の駅」の制度化などに尽力。その後、東京大学特任教授、京都大学大学院特命教授、早稲田大学客員教授を歴任し、現在は『大石久和のラジオ国土学入問』(ニッポン放送)でパーソナリティを務める、国土学総合研究所所長で作家の大石久和さんに、「国土学」の観点から、日本古来の国民性の重要性についてわかりやすい言葉で解説いただきました。

私たちを守るのは、日本国そのものである

新保アナ(以下、新保) 前回は、コロナ禍におけるメディアのあり方や消費増税のカラクリなどについてお話を伺いました。今回は、改めて考える機会も増えたであろう、いわゆる会社組織などのあり方についてお聞かせいただければと思います。今ここで、会社が社員を守るために、働きやすい環境を用意するために、会社や組織というものがどう変わっていくべきか、ぜひ、ご教示ください。

大石氏(以下、大石) すでにこの長い間、日本もそうですし、アメリカをはじめとした多くの国々が、“株主資本主義”や“グローバリズム”という言葉で、「国境の壁が低くなることは正しいことだ」「自由な貿易ができ、自由に売ったり買ったりすることができることがより良い環境だ」と謳ってきたわけです。そして、「企業というのは株主に奉仕する存在だ」と、そんな認識で世界が動いてきましたよね。今、私はこの両方が問われ始めていると感じています。

新保 それは、「より良い環境」が変わるということでしょうか。

大石 そうなんです。たとえば安倍首相が数年前にアメリカで、「もはや国境や国籍にこだわる時代も終わりました」と言ったんですね。でも、たった今、われわれを守ってるのは、われわれの国籍であり、われわれの国境なんですよ。

新保 確かに仰る通りです。

大石 もちろん、私は「一国主義」になってほしいとは思いませんが、かつての大恐慌のあともそうだったように、国家の孤立化、あるいは国家主義といいますか、そういう芽が出てくるのは、ある程度やむを得ないと思います。コロナの感染拡大により、「日本人は日本人によって守られなければならないということが、明らかになってきた」ということです。もちろん中国の人は中国によって守られる、イギリスはイギリスによって守られる。コロナを機に、そういう状況が目に見えてきましたよね。したがって、結局、「私たちを守っているのは日本国なんだ」――そういうところに立脚した議論を深めていく必要があるのではないでしょうか。

新保 まさに、今回のコロナ禍で思い知らされているところですね。

大石 この主張は「国粋主義になれ」だとか、そういう意味では全然ないですよ。「私たちを守っているのは日本国なんだ」という基本的な事実をきちんと認識した上で、国際間の友好関係だとか貿易関係だとかを大事にしていきましょう、ということなんです。この構図を、今回のコロナショックが私たちに極めてわかりやすく教えてくれているような気がしています。