新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中も大きく揺れています。国民の生活が大きく疲弊している今、求められるのは国による大規模な経済支援です。しかし内閣支持率の下降からも明らかなように、多くの国民は政府の対応に満足していません。ではなぜ国は、そして財務省は国民が望む経済支援を迅速に行えないのでしょうか?

そこで建設省(現国土交通省)に入省後、道路局長などを務め、「道の駅」の制度化などに尽力。その後、東京大学特任教授、京都大学大学院特命教授、早稲田大学客員教授を歴任し、現在は『大石久和のラジオ国土学入問』(ニッポン放送)でパーソナリティを務める大石久和さんに、「経済」「マスメデイア論」「歴史」「国土」などの観点から、日本の取るべき対応と進むべき道についてわかりやすい言葉で解説いただきました。

日本はビハインドからのスタートである

新保アナ(以下、新保) 今回は、美しい日本を後世に残すための「国土学」を提唱されている大石久和さんをお迎えして、新型コロナウイルスの感染拡大による日本経済への影響、そして、私たち日本人がいかにこの難局を乗り越えていくべきか、さまざまな観点からお話を伺っていきたいと思います。本日は、どうぞよろしくお願いします!

大石氏(以下、大石) こちらこそ、よろしくお願いします。

新保 このインタビューを行っている5月11日現在、まさにコロナ禍に直面している私たちですが、とくに東京などは完全な収束の兆しが見えない一方で、やはり経済を回す、ということが大きな課題となっています。大石さんは、このあたりについて、どのようにお考えでしょうか。

大石 そうですね。本来ならば、コロナというウイルスと闘うことに集中しなければいけないところですが、コロナの影響でとんでもない数の失業者が出始めていることは確かです。同時に、国民の購買、消費、あるいは需要という言い方をしてもいいのかもしれませんが、いずれも激減しているんですね。消費が激減することで、さらに大きな失業を生む……。そういうリスクがあるわけです。したがって、世界中の国々がそうしているように、日本でも大きな経済対策が絶対に必要だと思います。

新保 やはり、経済面での影響は無視できませんね。

大石 その際に注意しておかなければならないのは、「私たちの国はすでにビハインドした状態、遅れたところからスタートしている」ということなんです。つまり、どういうことかと申しますと、昨年の10月に消費税を上げてしまいましたよね。2%上げた結果、昨年の10月、11月、12月の3カ月の統計を年率のGDPに換算すると、もうすでに7.1%のマイナスになっていたんです。そこにコロナがやってきて、世界的な不況の中に日本も巻き込まれていく……。このような未曽有の状況になっているわけですから、日本政府は、相当、大きな経済支援をしなければいけないでしょう。

新保 すでにビハインドから……。かなり厳しい状況だということがわかります。

大石 これは、国民の皆さま方にぜひご理解いただきたいのですが、「政府は国民を守るための最大にして最後の保険機関」なんですね。つまり、この保険機関(政府)がこういうときに機能しなければ国民を救ってくれる人はありません。したがって、政府こそが大きな救済策を打っていかなければいけないんです。

▲「政府は国民を守るための最大にして最後の保険機関」と強調する大石氏

新保 なるほど、いまこそ、政府が大胆に動くときなのですね。

大石 そうなんです。国際労働機関(ILO)は推計で、「場合によっては労働人口の40%が失業状態になるかもしれない」とまで言っているんですね。そうなると、これは1930年の大恐慌以来の恐慌になる可能性があるわけです。そのことを日本の政治中枢がどのぐらい理解できているのか、いわば試されているように思いますね。