宗教改革の時代に完成した文学と演劇

全盛期を迎えたローマ教会の権威に挑戦したのが宗教改革であり、それに対抗してイエズス会らが反宗教改革を支えた。一方、キリスト教への批判も解禁され、その頂点が18世紀フランスにおけるヴォルテールらによる啓蒙思想の隆盛である。

マルティン・ルターは『95ヶ条の論題』で、教会の権威を否定し聖書のドイツ語訳を行った。ジャン・カルヴァンは『キリスト教綱要』などでカトリックと戦うことや倫理性の高い生活をすることを求めた。それに対して、イグナチオ・デ・ロヨラは多くの書簡などでカトリック精神を鼓舞した。

▲宗教改革の時代に完成した文学と演劇 イメージ:PIXTA

また、その象徴は、ニコラウス・コペルニクスの地動説、さらにガリレオ・ガリレイやアイザック・ニュートン(『プリンキピア』)が宇宙の仕組みを明らかにした。

哲学では『方法序説』のルネ・デカルトによって、理性の重視が理論化され『人間悟性論』のジョン・ロックは、経験主義を確立して民主主義に理論的基礎を与えた。ブレーズ・パスカルは、人間性における悲惨と偉大の両極を直視し救うものがキリスト教である、という考えを『パンセ』で著した。

『哲学書簡またはイギリス便り』などのヴォルテール。『社会契約論』や『エミール』のジャン=ジャック・ルソー。『法の精神』のシャルル・ド・モンテスキューらによる啓蒙主義は、人権が自然法的に与えられたことを確認し、過去の権威を否定してフランス革命に道を開いた。ドゥニ・ディドロとジャン・ル・ロン・ダランベールによる『百科全書』の刊行は、近代合理主義の普及に絶大な影響を与えた。より直接的に革命的気分を煽ったのは、カロン・ド・ボーマルシェの『フィガロの結婚』。

文学では英国のウィリアム・シェイクスピアが、近代劇の隆盛をもたらした(『ハムレット』『ロミオとジュリエット』など)。フランスのヴェルサイユの宮廷では、古典劇が好まれ『ル・シッド』のピエール・コルネイユや『フェドール』のジャン・ラシーヌ、ほかに『タルチュフ』のモリエールらが活躍した。

英国では、ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』やダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』のような冒険物語が好まれた。

ドイツでは『ウィリアム・テル』のフリードリヒ・フォン・シラーや『若きウェルテルの悩み』『ファウスト』のヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが出て、激しい感情を表現してロマン派への道を準備した。またグリム兄弟の『グリム童話』がまとめられた。フランスのラクロの『危険な関係』は書簡体文学を、ラファイエット夫人の『クレーヴの奥方』は恋愛小説というジャンルを確立した。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。