「文句を言ってさえいれば、うまくいく」ことは、あまりありません。それでは、ただおとなしくしていればいいのかというと、そういう訳でもないのです。スクール・コンサルタントであり、心理カウンセラーとしても活躍する諸富祥彦氏によると、子どもの担任教師に要望を伝えるときに、気を付けるべき“言い方”があるという――。
※本記事は、諸富祥彦:著『教師の悩み』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
モンスターペアレントになるのだけは避けたい…
かつては保護者の方がよく「子どもを学校に人質にとられているから、私たちは何も言うことができないのです」とおっしゃっていました。今でも「あまり先生方に注文をつけすぎると、“うるさい親の子ども″ということで内申書が不利になるのではないか」と気にする保護者の方もいます。
しかし、これは明確に言えることですが、保護者が多少面倒くさい親だからといって、子どもの内申に大きくマイナスに響くなどということは決してありません。今の日本の学校がそれほどゆがんでいるとは思えません。
逆に多少の注文をしたからといって、内申書がひどくなったケースというのも私は聞いたことがありません。日本の学校はそこまでおかしくなってはいないのです。
しかし、文句をつけすぎるのもよくない。それではいわゆるクレーマー、モンスターペアレントになってしまいます。では、どうすればいいのか。
「賢い親」は学校との「賢い付き合い方」を知っています。学校との賢い付き合い方を知っていることは「親として賢明であること」のひとつの条件であると言っていいように思います。
- 「あの保護者は、私(担任)を飛ばしていきなり校長に文句を言うんですよ」
- 「私(担任)には何も言わないのに、いきなり教育委員会に連絡をしたんですよ」
このような言葉を担任の先生方からしばしばお聞きします。
先生方が嘆くのも無理はありません。日本の学校ではまだまだ「学級担任中心主義」が根強いからです。学級担任のほうも「自分が学級担任である」という強い責任感を持っているからこそ、子どもとのさまざまな粘り強いかかわりが可能になっているということがあります。
にもかかわらず担任を飛ばして物事を運ぼうとすると、信頼関係を崩してしまう。これは保護者にとって必ずしも得策とは言えないと思います。
もし学級担任に関して何か不平不満がある時には、まずは本人にそのことをやんわりと伝える。これが一番賢明な方法だと思います。