サンダース支持層が民主党の未来
サンダースの政策を語るべきもうひとつの理由は、長期的に見れば、サンダース支持層が民主党の未来だからである。あるいはアメリカの未来だからである。スピーチで本人も強調しているように、若年層の間の支持では、サンダースがバイデンを上回っている。
たとえば、バイデンが勝ったミシガン州を取り上げよう。18歳から29歳の年齢層だけで見ると、サンダース支持が57%で過半数を占めた。そしてヒスパニックと呼ばれるラテンアメリカ系の人々の間でも、サンダースは53%を押さえた。この人々も民主党の未来を握っている。なぜなら、その人口と投票率の伸びが予想されているからだ。
ヒスパニック人口は約6000万で、アメリカの総人口の18%を占めている。この数値は、1970年代から実に6倍に増えている。そして今世紀の中頃には、人口は1億人を超えると推測されている。これは、アメリカ人の4人に1人がヒスパニックとなる計算である。
ピュー研究所が2016年に公表した、アメリカの人種構成の予測データでは、2065年には、ヒスパニックの人口比が24%に達する。その後の研究などによれば、この時期がもう少し早まるのではないかとの見方が一般的なようだ。
ヒスパニック人口の増大がすでに感じられるのは、人口面でアメリカ最大の州であるカリフォルニアである。時々「アメリカは世界の未来」という言い方がされる。ファッションや音楽など、アメリカで起こった流行がやがて世界中に広まるからだ。その前に、まずカリフォルニアで起こったことが、やがてアメリカ全体に広がる。つまり「カリフォルニアはアメリカの未来」なのである。
そのカリフォルニアの有権者の3割以上はすでにヒスパニックである。そしてアメリカ全体でも、いずれヒスパニックが増大することを示している。今回の予備選挙ではサンダースが、この州を制した。
人口で2番目のテキサス州でも、ヒスパニックの割合は3割を超える。しかも伝統的に低いとされてきたヒスパニックの投票率が上がっている。2018年の中間選挙でのヒスパニックの投票率は、2016年の選挙の2倍であった。ヒスパニックはアメリカの未来を決める大きな力である。この人たちの支持を集めるサンダースの政策が、将来のアメリカの政策になる可能性は決して小さくない。
サンダースは、自らを「民主社会主義者」と名乗る。アメリカ社会には社会主義という言葉へのアレルギーがあり、以前ならそのような候補者が大統領予備選の決選投票まで残るようなことはあり得なかった。
その原因には、広がる格差への反発がある。景気は良く失業率は下がっているのに、賃金が上がらず暮らしが厳しくなるという現実への反動である。無限とも思える政治献金で、金持ちが政治家を買収して金持ちへの減税を続けるシステムへの反発である。
サンダースは、政治家になった1981年から40年間にわたり、一貫して「公平で公正な社会を実現しよう」と語っている。それが受け入れられるようになってきた背景には、アメリカ社会の変化がある。現実がサンダースの主張に追いついた、と言えるのかもしれない。