「食」と「性」を堪能できた

むしろ、料理屋の方が豪壮な造りだった。

図1に「尾花屋」「梅本」「山本」とあるのは、料理屋である。

客はいったん、この三軒の料理屋のどれかにあがり、女中などを使いに立てて、図2のような女郎屋から遊女を呼び出した。

遊女が座敷に来ると、ともに酒食を楽しむ。その後、奥座敷に案内されて、遊女と床入りした。

つまり、仲町では「食」と「性」を堪能できたことになろう。

もちろん、その分、普通の女郎買いよりは高い物についた。

図3『睦月深仲町』(鶴屋南北:著/天保5年) 国会図書館:蔵

図3は、女郎屋の遊女たちである。図2に階段が描かれているが、階段をのぼると、こうした光景があったことになろう。客に見られるわけではないので、けっこうだらしない。

料理屋から声がかかると、いそいそと出かけていく。

なお、女の子は、吉原の禿に相当する雑用係である。荷をおろした男は、小間物屋のようだ。

『江戸の男の歓楽街』は次回8/5(水)更新予定です、お楽しみに!

【用語解説】

深川の岡場所は、伏玉と呼出しという、独特の制度があった。

・伏玉(ふせだま) 
客は女郎屋にあがり、そこで遊女と床入りする。この方式は、他の岡場所と同じと言ってよい。現在の風俗用語では、ハコモノに当たる。

・呼出し 
客は料理屋にあがり、女郎屋から遊女を呼出す。酒や料理を楽しんだあと、料理屋の奥座敷で遊女と床入りする。現在の風俗用語ではデリヘルに相当するであろう。当然、伏玉よりも呼出しの方が高い物についた。だが、この呼出し制こそが、深川の料理屋が繁盛した理由だった。