コロナの感染拡大により、特にダメージが大きいのは飲食業界だろう。そんな状況下の中で、いかに生き残っていくべきか? 墨田区立花で人気ステーキハウス『ミスターデンジャー』を経営する元プロレスラーの松永光弘さんに、どこにも語っていなかったプロレスラー引退の真実を聞いた。

スピリチュアルカウンセラーが伝えた衝撃のひとこと

――ステーキハウス『ミスターデンジャー』をオープンした時点では、まだ松永さんは現役のプロレスラーでした。2009年に引退されるんですが、そのあたりの事情はこの本〔『デスマッチよりも危険な飲食店経営の真実』(小社刊)〕ではあまり触れられていませんよね。

松永 本当は書こうと思っていたんですけど、ちょっとオカルト的な要素のあるエピソードも出てくるんですよね。せっかく店の話をリアルにバカ正直に書いてきたのに、そういう話が入ることで、なんか怪しく思われてしまったら嫌だな、と思って削ってしまいました。

――差し支えがなければ、少し聞かせていただいてもよろしいでしょうか?

松永 一時期、スピリチュアルブームみたいなものがあったじゃないですか? そのとき、知人の紹介でスピリチュアルカウンセラーの方に見ていただいたことがあったんですよ。

――オーラが見えたりする方ですか?

松永 女性のカウンセラーの方だったんですけど、私を見るなり号泣して「あなたはもうすぐリングで死にます! 早くプロレスを辞めてください!」って言ったんですよ。まぁ、そう言われても、私はまだ42歳でそこまで体力の衰えを感じていなかったし、そこまで気にはしていなかったんですよ。

――ただ、そこまでストレートに言われると、ちょっと引っかかりますよね。

松永 当時、私は『ZERO-1 MAX』という団体に参戦していたんですけど、カウンセラーの方に見ていただいたあと、ある地方大会でエースの大谷晋二郎選手と場外乱闘になって、体育館の壁におもいっきりぶつけられたんですよ。

――プロレスを知らない方はびっくりされているかもしれませんけど、松永さんのファイトスタイルでは当たり前の攻防になります。まったくデンジャーではない。

松永 そうなんですよ。たしかに痛いんですけど、いつもだったら次の瞬間には、もう相手に向かっていっている。ところがそのとき、これまでに感じたことがないぐらいのダメージを受けたんですよ。自分でも「なんだ、これ?」と理解できないような痛みが全身に走って、一瞬、動けなくなってしまった

――それは怖いですね。

松永 しばらくして、今度は田中将斗選手と対戦したんですけど、試合中に彼のダイビングボディープレスを食らったんですよ。

――田中選手とは90年代のFMW時代から、もう数え切れないほど対戦していますよね。そして、この技は田中選手にとって、けっしてフィニッシュホールドではありません。

松永 私も体で覚えているわけですよ。だいたい、これぐらいのダメージを受けるだろうな、と。ただ、技を食らった瞬間に、もうその想像を遥かに上回る衝撃を受けて。「えっ、いつから、こんなに田中選手の技は重たくなったんだ?」と思ったんですけど、しょっちゅう対戦しているわけで、急に変わるはずがない。となると、原因は私にあるんじゃないか、と。大谷選手との場外乱闘でのダメージもことも頭にありましたから。そこでスピリチュアルカウンセラーの言葉が頭をよぎったんですよ。