「平和的」と「急進的」どちらも必要だと今は思う
福島:デモが暴力的になっていることはどう思いますか?
周庭:この3カ月間、何度となく日本メディアからそういう質問を受けました。デモのことを、あまり軽々しく暴力的とか暴徒化というのはフェアではないと思います。
私たち香港人は民主主義のために、この20年間、いろんな手段を使ってきました。今回の運動のなかでも、デモやストライキ、授業ボイコットなどさまざまな穏健で平和的手段で訴えてきました。でも、こういう手段を使っても香港政府はまったく民意に向き合わなかった。私はもともと非暴力を主張してきましたが、日本の皆さんにはまず、香港人の怒りを理解していただきたい。
周庭:普通の平和的デモには政府も慣れてしまい、まったく動かない。今のような激しいデモになって、経済にも影響が出て、予測できない事態が起こりうるようになって、政府にとってプレッシャーが強くなった。条例改正案撤回を発表したのも、デモが過激化してからです。平和的手段と急進的な手段、両方も必要だなと今は思うようになりました。
福島:でも、火炎瓶を投げたり地下鉄を破壊したりするのは、日本人から見るとやりすぎではないか、と思ってしまいます
周庭:日本人の方には、まず事実を知ってほしいです。警察がデモの参加者になりすましていることも多いのです。8月中旬から警官がデモの参加者になりすます例が確認されています。デモの参加者になりすまして何をするか。デモ隊になりすまして火炎瓶を投げていた警官がいたことは、ニュースにもなりました。
次にデモの参加者の気持ちも考えてほしい。私たちはすでに平和的な手段を使って何度も訴えてきました。外国だったら100万人のデモ隊が街に出てきたら、政権が交代しますよね。
香港人は今、五大訴求だけのために戦っているのではありません。死んだ仲間、虐待された仲間、銃に撃たれた仲間、セクハラされた仲間がたくさんいます。現場では警察の暴力がエスカレートしています。10月1日のときも、警察官が銃を構えながら、デモの参加者を追いかける場面がたくさんありました。
デモの最前線は、反撃をしないと殺されるかもしれない、という緊迫した状況があります。そもそも権力を持ち、いくつもの武器を携えた警察の暴力とデモ隊の暴力を比較すること自体、フェアじゃないです。
福島:中国のメディアで、デモの背後に米国がいて、CIAが操っている、CIAから工作費や工作員が来ていると言っていますね。それについてはどう思いますか?
周庭:笑ってしまいますね。中国人は独裁体制のなかで、命令に従うことに慣れてしまって、自分の判断で行動することができないから、そう思うんでしょう。
福島:五大訴求の最後に普通選挙の要求がありますが、普通選挙が実現すれば、香港は変わると思いますか?
周庭:普通選挙があれば社会問題が全部解決されるということではありませんが、民主主義を実現するということになります。民主主義がないのは香港の根本的政治問題のすごく重要な部分です。
福島:周庭さんは今度の区議選挙には出馬されるつもりはありませんか? 黄之鋒さんは出馬されますね。黄之鋒さんたちが当選すれば、香港の現状は変わりますか?
周庭:私は出馬しません。黄之鋒は出馬すると言っていますが、まずは出馬できるかどうか、まだ分かりません。資格が取り消される可能性もあります。
あと、親北京派が区議会選挙を延期させようとしているという噂があります。今回の運動を通して、民主派への支持率が上昇し、親北京派の支持率が急落しています。区議会選挙は小さい選挙ですが、香港の選挙のなかでは最も民主的なので、もし予定通り実施されれば、親北京派が惨敗すると思います。
中国政府は、この選挙で負けることを非常に怖がっていると言われています。資格が取り消される前に、区議会選挙が実施されるかどうかも分かりません。