次元が違う「コロナ禍」という土壇場

2020年、松田さんは4度目の「土壇場」の渦中にある。新型コロナウイルスの感染拡大によって、飲食業界が大きな打撃を受けているのだ。

自社で展開する店の客は4月・5月と前年比で9割減になった。6月には前年比3割減まで盛り返したが、7月に感染者数が増えたことや「GoToトラベル」から東京が除外されたことの影響は大きい。昨年はクージュー株式会社を設立し、AIを活用して、人と接触せずに注文できる仕組み等を開発。Eggs 'n Thingsでの運用を試しているが、すぐに結果に結びつくかはわからない。

「今は正直、自信が揺らいでいます。『コロナ禍』っていうのは自分が必死になって動いてもどうしようもない。人の動きが止まってしまいましたから。売り上げはどんどん下がる。どうしようもない。私もいろいろ情報発信はしています。こういう考え方はどうかって。でも初めて、自分が必死になってもどうにもならないことってあるんだなって痛感している状況です」

松田さんは「もしかしたら人生で初めてストレスというものを感じているかもしれない」という。しかし、それでもなお、松田さんが飲食業界にこだわり続けるのは理由がある。

「なんで飲食が面白いかっていうと、もっとも自由度が高い業界なんですよ。あと(海外で暮らした)小・中・高校生時代、お刺身を食べている日本人はバカにされた。そんな経験も飲食にこだわるベースにあります。そこから海外では次第に寿司の人気が高まって、日本という国の人気も高まっていった。ちょっと前までインバウンドで日本がここまで伸びるなんて誰も思ってなかったですからね。すべては食文化です。人間の楽しみは『食』なんです」

▲飲食は松田さんの原点だ。今後の取り組みにも注目したい
プロフィール
 
松田 公太(まつだ・こうた)
クージュー株式会社 代表取締役 CEO
EGGS 'N THINGS JAPAN株式会社 代表取締役
1968年生まれ。5歳~高校卒業までの殆どを海外で過ごす。筑波大学卒業後、銀行員を経て97年にタリーズコーヒー日本1号店を創業。翌年タリーズコーヒージャパン(株)設立。2001年株式上場。320店舗超のチェーン店に育て上げ、07年、同社社長を退任。同年、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーに選出。10年、参議院議員選挙で初当選。16年、議員任期満了後は、Eggs 'n Thingsの世界展開や自然エネルギー事業など精力的に活動中。19年、飲食チェーンの運営やシステム開発のため、クージュー株式会社を設立。上場企業2社を含め、多くの企業の社外役員、アドバイザー、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の顧問も務める。