キャッチコピーは“観るのも読むのも、これひとつ。”

――それでは、電子書店員としての普段のお仕事についてお伺いしようと思うのですが、リアルの書店を見回ってらっしゃるんですか? 電子書店員さんですよね(笑)。

崎山 そうですね、ちょっと不思議な表現してしまったんですけど(笑)。キャンペーンとか、その時々に合わせた特集であったりとか、SNSを使ったプロモーションをしながら、どうやって伸ばしていくかっていうところを常に考えています。そのなかで一番活用しているのが、お客様のログデータだったりとか、出版社さんや取次さんから教えていただいたりと情報収集をして、U-NEXTなりにどういうサービス作りをしたらいいのかな、どういうのが好まれるのかなっていうことを考えているので、リアルな書店を見回るのと感覚としては近いのかなとは思って、書店を見回ってるという表現をしました。

中野 そうですね。何を推すかっていうところで、動画の調達する部署とも連携することもあります。例えば、さっきの『2gether』みたいに、すごく注目されるコンテンツが今度入るんだよ、みたいなところをキャッチアップして、電子書籍と一緒にプロモーションするとかいうようなことも、部署横断でやったりとかしてますね。

――それができるのはいいですよね。部署が違うとなかなかコミュニケーションがスムーズにいかない、なんてこともあるじゃないですか。

中野 そうですね、そこは割と近い関係だとは思います。さっきのアプリを統合した当初は、まだビデオとブックって別な感じもあったんですけど、だんだんU-NEXTのサービスとして、両方あるってことが他のサービスにない強みだよね、というのが浸透していってますね。今だと、アプリを開いていただいたときの目立つところに、“観るのも読むのも、これひとつ。”ってコピーが入ってます。これはU-NEXTとしては観るもそうだし、読むもそう、これ一つで楽しめますよっていうところが、ユーザーさんに支持していただけていると思ってます。

――サイトを拝見すると、価格キャンペーンが並んでる以外に「使える時短簡単レシピ」や「健康のススメ」など、まさに情報収集をして、今これをピックアップしようって考えられていらっしゃいますね。

崎山 はい、おっしゃる通りです。毎日毎日新作の作品はたくさんありますが、その中から、最近話題になっているところをキャッチした担当者が、特集のブロックを組んでます。直木賞や芥川賞の発表などがあれば、その受賞作品をまとめた特集を作ってみたりとか。

あとは宣伝になりますが『花束みたいな恋をした』というヒット映画がU-NEXT独占での配信が始まりまして、この作品は書籍や漫画をフィーチャーしていたので、そこに出てきた作品をまとめた特集を作ってみたり、というようなことをしてます。まさに動画のユーザー、邦画をご覧になった人が、劇中で出てきたあの本を読んでみたいな、と思われたときに、探しやすいよう考えて特集を組んでますね。

中野 他のストアさんがどうしてるかわかんないんですけど、U-NEXTの場合、その特集をすごく簡単に作れるような仕様になってて、数時間で作れちゃったりするんですね。

――即効性のあるサイト作りをされてるんですね。

中野 そうですね、比較的そこはスピーディーにできるかなと思います。

――あと、気づいたのは、御社が動画を配信されてるからかもしれませんが、背景が黒ですよね。電子書店ではそんなに多くないと思うんですけど。

中野 あ、なるほど。たしかにそうですね(笑)。

――書影が目立つなと思って。

中野 ユーザーインタビューをしたことがあるんですけど、この黒が好きな人からはシンプルでクールな感じで、ごちゃごちゃしてなくて見やすいといった評価はいただけますね。

電子書店でもお客さんの顔は思い浮かべられる

――書店員としての面白さを感じる場面をお伺いしたいんですが、先ほどおっしゃってたような分析と、掘り下げのところがやりがいがあるということですね。

崎山 そうですね、他にもいろいろあるとは思ってるんですけれども、やっぱり電子とリアルで大きく違うところで言うと、お客様と対面する機会があるかないかっていうところが一番大きいと思ってます。なので、電子だとお客様の顔が見えづらいっていうのが悩みなんですが、ユーザーインタビューも積極的に行って、お客様の直の声を伺うようにしています。

そういった定性調査の結果やユーザーの行動ログを集積して、こういう人はこういう作品を好みそうだなとか、こういう特集を作ってみよう、キャンペーンやってみようなど、ユーザー像をぼんやりではあるんですけども、思い浮かべながらやることができています。お客様のニーズを予測して施策を打つ、そこで結果が出ることで感動とか面白みを得るっていうのは、電子だとしても感じることができるんじゃないかなと思います。

――そういう細かな分析をして、フォローしてるというか。

崎山 そうですね、そうしようと努力しているというところでしょうか。

――素晴らしいですね。他の書店でもデータ分析はしていると思うんですけど、御社は動画だったりとかも合わせて見られるから、人物像がよりリアルになるんじゃないかと思ったんですが。

崎山 おっしゃる通り、いろんな趣味嗜好の面を、音楽・動画・書籍など、それぞれから情報を得られるので、よりリアルになるかもしれないですね。