「U-NEXTの中の人」が薦めるマンガとは?
――御社ならではの売れている本やジャンルでいうと、メディア化されたコミックってことですね。
崎山 そうですね、やはり漫画が多いです。文字ものを含めてもコミックが多くて、その中でもメディア化された作品が比較的に目立つような印象です。
――20代以下のユーザーが多いんですね。30代や40代がボリューム層かなって思っていたので意外に思いました。
崎山 はい。特徴のひとつだと思ってます。コミックのユーザーの5割程度が20代以下です。学生さんも含めてですが半分ぐらい占めている、作品によってはそれ以上のときもある、ということを出版社さんに伝えると「これから漫画文化を育ててもらいたい人たちにタッチできるっていうのは、すごいポジティブです」といった声をいただきます。おそらく動画を見るのが若年層に多い所からスタートした、というのもあるのかなと考えてます。
――すごく明るい未来ですよね。次に、この本を仕掛けて売れましたということでいうと「次にくるマンガ大賞」のことになるんでしょうか。
崎山 はい。こちらも特別協賛という形で2019年からお取り組みをさせていただいてまして、我々がU-NEXT賞というような形でウェブとコミックの両方選出させていただいています。我々の観点でU-NEXTらしく「メディア化してみたいな」と思える作品、というのを頭に置きながら審査をしています。
――この本を仕掛けて売れました、というよりは、この本を仕掛けてアニメ化しました!って。
崎山 それで売ってくれたらいいな、という思いも込めて(笑)。たぶん、火がつきやすい環境にあるので、アニメと漫画がシナジーをもって売れるっていうところが、この賞を通じてできればいいなと思います。
――なるほど、ありがとうございます。個人的に推したい本を一冊ずつ出していただいてるんですけども、中野さんが『見える子ちゃん』(KADOKAWA)。
中野 はい。最近ハマったんですけど、もともと普通のバトル漫画も好きだし、ギャグ漫画も好きだし、ジョジョとかも大好きなんですけど。この『見える子ちゃん』は、1話完結で読みやすいんですが、可愛い女子高生がいる日常の漫画かと思いきや、そのものすごくグロテスクな異形のモンスターみたいのが見えてしまって、驚くかと思いきや、そのままシカトするっていう(笑)。
――この完全にシカトするっていうのが面白くて、私もアニメの公式サイトをちょっと見にいったんです。そしたらまだシカトをする前でそのティザーが終わっちゃって、どんなふうにシカトするのか見たかったのに(笑)。
中野 そう! なんかそれだけなんです。それが毎話毎話いろんな日常のなかで、見えちゃうんですけど、ただ完全にシカトするっていう(笑)。
――面白いですね(笑)。そして、崎山さんが『ダンスダンスダンスール』(小学館)を挙げてくださいました。
崎山 はい。ファンタジーとか漫画らしい世界観よりも、リアルな世界を漫画らしく描く作品が好きなんですね。この作品に関しては、男性が主人公のバレエ漫画っていうところで、少し珍しさもあったりして読み始めたんですけれど、ダンスの描写がすごい躍動感で素晴らしいなと思ったのと、これがアニメ化されるっていう情報を聞きまして、どういうふうに表現していくんだろうなっていうところが興味があるので、ここにピックアップさせていただきました。
――なるほど。それは楽しみですね。
崎山 そうですね。どこまで表現されるのかなっていうのが、作品のファンとして見てみたいです。
動画・書籍・音楽で時間を取り合うことはない
――それでは最後に、これから取り組んでいきたいことについてお聞きしたいんですが、“オールインワン・エンターテイメント・プラットフォーム”を強化されるということでしょうか。
崎山 そうですね! そこがU-NEXTの大きな強みだと思ってますので。うちの場合、月額会員の方に2,000円近く払っていただいてまして、良い意味でエンタメにお金を惜しまない人がたくさんいらっしゃるという環境にあります。動画がきっかけで入っていただくことが多いので、U-NEXTには小説も雑誌もあったんだって気づいてもらって、普段は本屋に行って買う習慣はないけど、ポイントを使って読めるんだったら読んでみたいなっていう方々に、どうアプローチするかというのを考えてます。
――スマホの普及で電子書籍も一緒に伸びたと思っているんですけど、その代わりに、そのひとつの画面でゲーム・動画・電子書籍が時間を取り合うみたいなイメージがあったんですね。ただ御社の取り組みのかたちだと、共存というか、仲良しの未来がちょっと見える感じで(笑)。いいなと思いました。
崎山 そうですね。ある調査会社さんから伺ったんですけれども、動画と書籍と音楽とありますけど、時間を取り合うことはない。どんどん上積みしていくというような調査結果が、今のところ出ているそうなので、そこを信じていますし、そういう環境を伸ばしていければな、というような感じです。
――へー! 取り合うんじゃなくて増えていくんですね。それはありがたい情報です。
崎山 電子書籍という業界で大きく見ますと、いろんなストアさんが無料とか、読み放題を楽しめるっていうところで、新たな電子書籍の楽しみかた、売りかたを提供されていて。そのなかで、U-NEXTでも新しいジャンルとか、販売方法に積極的にチャレンジしたいなと思ってます。
そして、U-NEXTのお客様って何を求められているのかなっていうことは、常に考えていきたいと思っています。いろいろあるサービスのなかからU-NEXTを選んでいただいたので、あれもできてこれもできて、運営としては良い意味で離れられない、という状況にしていきたいなっていうのは、電子書籍の部署だけでなくて、各部門が思ってることですね。
――おふたりもそうですが、U-NEXTの会社としての温かみも感じさせていただきました、今日はありがとうございました!