新しい仕事を自分自身でつくること
いまの日本では、世代間格差だけでなく、あらゆる格差の溝がとてつもなく深いものになり、そこかしこで搾取や衝突といったことが起きていることが実感としてあると思う。大半の社会問題は、根っこのところで格差というものでつながっている。
高齢者・中高年・ひきこもり・ビジネスマン・不良など、当事者はそれぞれ「自分はいまを生きるので精一杯で社会全体を見る余裕なんてないんだ」と言うかもしれない。でも、こうした態度が、格差の拡大を助長させている。
僕は、追い詰められた人が目先の利益に飛びつく気持ちはわかるし、自分の利益を守ることが100パーセント悪いとは思っていない。
ただ、若い人が考えなければならないのは、次のようなことだ。
このままで日本に未来はあるのか?
日本の残り少ない資源を搾取して生活を維持できるのは、せいぜいあと10年、いや5年くらいかもしれない。近い将来、高齢者の財産は底を突き、多くのビジネスが行き詰まってしまう。自分たちが社会の最前線で働いている間に、そういう時代が訪れると考えたら、いま何をすべきだろうか。
ヒントになるのは、いまの20~30代前半の若い人たちが持っている、仕事や生活に対する新しい価値観だ。彼らも同じような現実に巻き込まれ、悩みながら、窮屈な現状を打開しようとしている。彼らは、主に3通りの方法で社会と向きあっている。
- 新しい仕事を自分自身でつくる。
- グローバルな世界へ打って出る。
- 新しい生き方を見つける。
ここで見ていきたいのが、1の“新しい仕事を自分自身でつくること”だ。
行政や民間では教育格差を縮めようという動きが出てきている。若者の教育レベルを上げ、社会で活躍できるようにするのが目的だ。
とはいえ、日本にある大半の企業は、終身雇用を守って十分な給料を出しつづけられるだけの力がない。日本を代表する企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長でさえ「終身雇用を守っていくのは難しい」と語っているほどだ。
つまり、それなりに勉強ができて、そこそこの企業に入ったとしても、絶対的な安定を手に入れることは困難なのだ。
いまの日本は、夜霧に包まれて先が見えなくなった状態にあるといっていい。
社会にはいくつかのレールが敷かれてはいるものの、それに乗ったところで未来に何が待ち受けているかは誰にもわからない。リストラや倒産はもちろん、社会保障さえ期待できない世の中になっているかもしれない。
ならば、いくら勉強しても意味がないのか。いや、そうじゃない。
これまで学校の教育の目的といえば、学力をつけて既存のレールに乗り、安定した生活を手に入れることだと考えられてきた。でも、これからは新しい時代に合った目的を設定しなければならない。
それは、子どもたちが学校での教育を通して「未踏の地を1人でも歩んでいける力」を養うことだ。
若者たちが生きていく未来の日本には、数多くの困難が待ち受けているだろう。
そのなかで身につけなければならないのは、世の中で起きていることを直視し、課題や求められていることを見つけ出し、自らの力で深め、それをビジネスや研究、アートといった形にしていく力だ。
僕は、学校はそれに必要な養分を与えてくれる「オアシスのような場所」だと考えている。