高校時代の失態から追い込まれた際の対処法に気づく

まだわたくしが『青春高校3年C組』の番組と出会う前の高校時代のことだ。パッと見この一文には違和感しかないが、まかりとおってしまうのだから不思議である。高校時代、わたくしは軽音楽部に所属していた。そこでは定期的にライブが行われており、部員で、且つそこそこの出席率であったわたくしは、何曲かをエレキギターで披露することになっていた。

「ギターって、弾けたら格好いいよな」くらいの軽い気持ちで部活動に望んでいたわたくしは、ライブに向け意気揚々と練習を始める。しかしそこで大変な事実に直面するのだ。それは「到底、本番に間に合いそうもない」というものである。

悲しいかな、それでも時は過ぎ、ライブの日はやってくる。当時、勉強も忙しく、徹夜が続いたわたくしは、猛烈な投げやりの押し寄せに耐えられず「どうにでもなれ! 解放されてくれる!」と思い、酷いことをしでかす。処方されていたものの、余剰がたまっていた向精神薬を大量服薬したのだ。

幸い、死に至るような量ではなく、救急車で病院へ運んで貰い、処置を施されて済んだが、他の部員のみんなには勿論、親や救急隊員さん、お医者様、看護師さんに多大なる迷惑をお掛けしてしまった。大量服薬はしてはいけない。そのうえ、わたくし自身も意識朦朧・吐き気・ふらつきに数日間やられて、しんどい思いをした。とんでもない自分不幸者だ。この場をお借りして、あの事件に巻き込まれたみなさまにお詫びを申し上げたい。

と、こんな経験があるもので、豊太郎をなじりつつも少し後ろめたさを感じるのである。もしかしたら、これを読んでいるあなたにも、自分が背負いきれないものを目の前にして自我が崩壊し、周囲の人々を困難に引きずり込んでしまった経験があるかもしれない。とかく、生きていくのは大変だ。

あの時どうすればよかったのか、いろいろな手段があるとは思うが、わたくしはこう結論づけている。自分がギターをできないことを認め、正直に周囲に打ち明けて助けてもらえばよかったのだ。高すぎる自尊心ゆえのホンモノの弱さが、自分を苦しめたのは言うまでもない。人間は、人間を信頼し頼ってこそ、生きていくのをほんの少しだけ大変ではないものにできるのだ。

どこぞのなんとか先生が仰っていた、人という字は人と人が支え合ってうんたらというのも頷ける。あまりにも時代が違うので軽はずみな発言はできないが、某アプリケーションのように一個人の呟きをするならば、豊太郎にも同じことが言えるのではなかろうか。彼も恥を忍んで信頼できる人へ、事が深刻になる前に相談すべきだったと思うのだ。豊太郎、君はたしかに謝ってもどうしようもないような間違いを犯した、開き直っているようだが、強く生きような。

▲豊太郎をなじりつつも少し後ろめたさを感じています

人を信頼すると誰かが自分を頼りにしてくれる

徐々に人を信頼する術を習得しているわたくしは、あることに気がつく。人を信頼して初めて、誰かが自分を頼りにしてくれるのだ。そして、誰かの役に立ってこそ生きがい、いや、もっと単純なうれしいという感情かもしれない、とにかくプラスのものを得ることができる。

先日、こんなことがあった。わたくしのワクチンの接種より先に、母は2回目の接種を済ませていた。その際やはり彼女も熱を出し、体の痛みでのたうち回っていたが、わたくしを頼ってくれたのである。

そのうれしさと言ったら! 人がしんどさで苦しんでいるときに、こんなことを思ってはいけないかもしれない。しかし、粥を作ったり、身の回りの事を手伝ったりして「助かるわぁ」という言葉を貰うと、なんでもしてあげたくなってしまうのだ。母の調子が少し良くなって、食欲が湧いてきたらしいときに拵えた料理の写真をupさせていただこう。あまり彩りは良くないが、手早く、愛情たっぷりに仕上げた夕餉だ。

▲療養中の母のことを考えて作ったお料理です

この日のメニューは左下より反時計回りに、野菜の肉巻き、卵がゆ、マッシュルームのお味噌汁、焼きとうもろこし、アボカドとモッツァレラチーズのサラダだった。これからもたくさん頼られたい。

実は、ここ数年で家族だけではなく、友人からも頼ってもらえた経験ができた。いちばん身近だと、相談に乗ったというごくごくありふれたものだが、昔の孤高のわたくしからは想像もできないことである。その友人は、お仕事での人間関係や、自分の能力について悩んでおり、電話で話を聞いた。SNSでも頻繁にやり取りを交わしている。

わたくしは、話を聞く、ということしかできないのであるが「ありがとう。綺音に聞いてもらえて助かったよ!」と言われると本当にうれしい。もちろんわたくしも向こうのことを信頼していて、よく相談に乗ってもらう。時には、何もかもがうまくいかなくて「もうやだ! ばぶ! 綺音は赤ちゃんになりたい!」などと深夜に喚き出すわたくしを、優しく宥めてもらうことさえあるのだ。(21歳にして未だに赤ちゃん返りをするのは少々問題かもしれない。これを書くまでは気がつかなかったのはもっと問題かもしれない)

今回は『舞姫』というお話と、わたくし自身の悲惨な経験から、人を信頼することの大切さを主に綴らせていただいた。信じることの重みは重々承知という方が多いだろう。でもこうして、わたくしが具体的な例を示すことによって、あなたがただ漠然とその重量を感じているのでなく、小さな1歩を踏み出せたら、と思う次第である。「よし、今日○○さんに思い切って、このモヤモヤを打ち明けてみよう」といった具合に。

もちろんその○○さんが、わたくしであったらそれはそれは幸せなのである。わたくしのLINELIVEは、そのためにオープンされているのだ。あまり細かいことは話せなくても、有耶無耶なモヤモヤを「やなことあってさぁ」と吐き出すだけでも、少し楽になるかもしれない。わたくしも親愛なるみなさまに、LINELIVEで日頃の愚痴を聞いていただくなどしている。これからも配信や、この連載によってギブアンドテイクで幸せを共有したい。


プロフィール
 
小沼 綺音(こぬま あやね)
2000年3月18日生まれ。東京都出身。「小学生に間違えられる」という見た目とは裏腹にクールで大人びた視点を持つ。リアクションや言葉のチョイスが面白く、番組で共演する芸人からの評価も高い。『青春高校3年C組』では軽音部に所属し、キーボードを担当していた。Twitter(@ayane_karona_ru)