フェイクニュースを見抜く力をつけることが重要
これほどまでに「フェイクニュース」という言葉が私たちの日常に広まったのは、米国のドナルド・トランプ前大統領のおかげともいえる。トランプ氏が大統領に就任する前後は、米国の世論に主要メディアが偏向的な報道を流しているとの不満が高まっていた。
トランプ氏は主要メディアに対して、ツイッターを使って「フェイクニュースだ!」と攻撃を続け、喝采を浴びた。
その後、大統領に就任すると、自分が気に食わない記事に「フェイクニュース」のレッテルを貼ることが増え、ジョー・バイデン氏との大統領選に敗北したときには「選挙で不正が行われた」というフェイクニュースをツイッターに投稿。さらには支持者を扇動したとして、ツイッターを「永久追放」されてしまった。
そして、米国のテスラCEOであるイーロン・マスク氏が「(ツイッターは)一見、穏健に見えるが、強い左派のバイアスがかかっている」「言論の自由を守る」として、トランプ氏の永久追放を「正しくなかった」と発言。
そのうえで「誰もが自分の意見を述べることができる場でなくなれば、根本的な信頼を損なってしまう」と述べた。ホワイトハウスのサキ大統領報道官は2022年5月10日、マスク氏の発言を受けて「誰が許され、誰が許されない、という判断はプラットフォームを運営する企業が決めるべきだ」「オンラインプラットフォームが言論の自由を守ると同時に、間違った情報の発信源にならないことを望む」と語っている。
言論の自由は、最大限に認められるべきなのだ。しかし、プーチン氏やトランプ氏のようなケースについては、受け取る側が「フェイク」を見抜く力をつけていかねばならないだろう。フェイクニュースをつくるのは、決して権力者側だけではないことにも注意したほうがいい。
誰もが騙される当事者であると同時に、騙す当事者でもあるのだ。世論工作は、政党、メディアだけでなく、一般市民が自ら信じる組織のために実行しているケースも多い。