『Tarzan』の表紙を飾ってみたい
――こうしてお話をお伺いして、こちらの疑問に全て理路整然とお答えいただいたなと思うんですが……。
若林 いえいえ、とんでもないです。ただおしゃべりなだけです(笑)。
――そんな若林さんでも、答えが出ていないこと、モヤモヤしていることなどはあるんですか?
若林 手術のことですかね。日本だと戸籍を変えるためには、生物学的女性の場合、子宮や卵巣を取るといった外科手術を行う必要があるんです。ただ、そこには当然のことながら、手術をするうえでのリスクが伴う。それは本当に必要なことなのかな? とかは考えたりしますね。
――不勉強ながら、その制度のことを知らなかったです。
若林 世の中には、さまざまなセクシュアリティ、ジェンダーアイデンティティの人がいて、そのなかでも皆さん一人ひとりがグラデーションになっているんです。でも、それは目に見えるものではないので、きっと“自分の周りにはいない”と思ってる方もいると思うんですよね。
だからこそ、もっと世の中にはいろいろな人がいるということを知ってほしい。考えてみると、これはLGBTQ+に限った話じゃないですよね。世の中にはいろいろな趣味嗜好を持つ人がいて、それが他人を傷つけたり犯罪行為じゃなければ、その好きなものに対して他人がどうこう言うのではなく、さまざまな人が世の中には存在するんだ、ということを認識できたらいいなと僕は思っています。
――そうですね。多様性を理解することが特別なことじゃなくて、普通のこととしてある社会になればいいですよね。若林さんが今後進めていきたいことや、目標、野望などお聞きしていいですか?
若林 やはり、トランス男性のタレントさんって、とても少ないんです。実際に「メディアに出してもメリットがなかった」とメディア側の人に直接言われたこともあるし。
――そんなひどいことを直接言ってくる人がいるんですか…!?
若林 ありますあります。「男が女に成り下がってるのは面白いけど、女が男に成り上がってるのは面白くない」って言われたこともあります。
――ひどいですね。
若林 ね(笑)。ただ、世の中の風潮が、本人の生まれ持っての特徴を笑うっていうのは違うんじゃないか、というふうになってきているので、自分も率先してメディアに出ていくようにしたいし、舞台など作品も残していきたい。こうやって僕が活動することによって、もっとトランス男性のタレントさんが増えていけばいいなと思います。あと、これはメディア初出しなんですけど……。
――わ、ありがたいです、メディア初出し(笑)。
若林 (笑)。今めちゃくちゃ筋トレしてるんです、逆三角形になりたくて。僕って骨盤が広くて、それがすごくコンプレックスなんです。だから、それを目立たせないように逆三角形にしたい! それで『Tarzan』の表紙を飾ってみたいです!
――素晴らしいですね、お写真を撮るときもすごく映えてましたし。あと、文筆業などは興味ございませんか?
若林 あります! じつは、いつか本を出したくて、2万字くらいは書いています。先程の母親の話とか、そういうのをまとめて、いつか出したくて。あとは以前、初めて自分の脚本で『イッショウガイ』という舞台をやらせていただいたんですが、これをゆくゆくは本にして映画化したいな、とも思ってます。
――いいですね! 読んでみたい!
若林 やりたいことたくさんあるんです、昨年も『Complex』っていう、トランスジェンダー男性10名のコンプレックスに焦点を当てたフォトエッセイを出版したんですが、同じトランス男性でも本当にいろいろな境遇の人がいるんです。なので、性の在り方に悩んでいる方、何かのコンプレックスに悩む方、トランスジェンダーのことをまだよくわかっていない方にもぜひ、読んでいただきたいですね。
――拝見させていただいたんですが、本当にいろいろな境遇の方がいるな、と思ってすごく興味深く読ませていただきました。
若林 ありがとうございます。あと昨日ふと思ったんですけど、日本テレビの24時間テレビのチャリティランナーもやってみたいです! これも初めて言うかもしれない(笑)、とにかく、やりたいことはたくさんあります!