懸念材料は栗山英樹政権で国際試合の数が少ないこと
今回の日本代表に関しては、国際試合の実戦不足が課題と見ている。東京五輪後に稲葉篤紀氏から栗山英樹氏に監督が替わったが、短期間で選手の選出からチームコンセプトの浸透、戦略・戦術などを組み立てることが、非常に難しい問題となっている。そのため、金メダルに輝いた東京五輪の野球がベースになることは間違いない。
ただ、東京五輪で主力だった「1988年世代」を優先しすぎると、大会を通して痛い目にあう可能性も高い。柳田悠岐(ソフトバンク)や坂本勇人(巨人)、大野雄大(中日)といった実績がありながら、キャンプテンシー、チームの雰囲気を変えられる選手を入れることはプラスになるが、それ以外の選手は吟味が必要である。
また、今回の強化試合で見られていない選手を選出するのかも難しいところだ。周東佑京(ソフトバンク)を代走+ユーティリティで選んでいたが、代表のレベルでは代走屋に近い周東だけではなく、高いクオリティでユーティリティに守れて、シーズンでも結果を残した牧原大成(ソフトバンク)も、このタイミングで呼ぶべきだった。日本代表のバランスを考えると、佐藤輝明(阪神)よりも強化試合で試すべき選手だったのではないだろうか。
捕手の起用に関しては、甲斐拓也(ソフトバンク)の序列が高すぎる点も気になった。おそらく、東京五輪で正捕手として日本代表を金メダルに導いた「錯覚資産」があるため、中村悠平(ヤクルト)よりも優先されて起用されていた。
この点も、強化試合で試していくなら、東京五輪の栗原陵矢(ソフトバンク)のような役割が期待できる坂倉将吾(広島)や、オリックスを日本一に導いた若月健矢、球界の将来的なリターンを考えると松川虎生(ロッテ)を見るのもよかっただろう。
投手陣を見るとほとんど問題はなかったが、本大会選出がほぼ確定と言ってもいい佐々木朗希が、あまりよくなかった点が気になる。疲れの影響からか、シーズン後半から調子は下降していたが、強化試合ではボールが合わないようにも見られた。しかし、今年のピッチングを見ると、春先に強いことから、来年は世界を相手に高いパフォーマンスを発揮してくれることを期待したい。