時代遅れのミサイルを使ったロシア軍
江崎 軍艦用の対艦ミサイルを武器庫の攻撃用に使ったのはおかしいという話ですが、なぜロシア側は牽制のために1トンもの対艦ミサイルを、ここで使わなければいけなかったんですか?
小野田(空) ロシア軍側の在庫がなくなったんじゃないか、とも言われていましたね。でも、それはありえるかもしれませんよ。対艦ミサイルKH-22が開発されたのは1962年で、1970年代にさまざまな改修が行われて、いろいろなタイプの派生型ができました。アメリカと戦うために開発された、核弾頭も積めるミサイルなんです。
伊藤(海) 4月に沈没したモスクワ(スラヴァ級ミサイル巡洋艦)が搭載していたミサイルがまさにこれですよ。モスクワも1982年からの運用ですから、考え方が70年代なわけです。その頃のミサイルです。
江崎 言わば50年以上も前のミサイルを、わざわざ引っ張り出してきて使っているわけですか?
伊藤(海) もう、在庫一掃セールみたいになっているんじゃないですかね。
小野田(空) 在庫がないという見方もできる。もともと核も搭載できるミサイルだから、そもそも精度などは低いという話もあります。
江崎 「脅すだけだったら別にこれでいいか」ということですかね。
伊藤(海) どうしても脅しとしか見えないのは、そういうことなんです。
小野田(空) そう見られてもしょうがないですね。
伊藤(海) ウクライナ海軍はないに等しい。つまりロシア海軍にとっては、対艦ミサイルを撃つべきウクライナ艦艇がいません。それで、倉庫にあった対艦ミサイルを陸上で使え、ということになったんじゃないですか。
小野田(空) Tu-22(超音速爆撃機)から発射したと言われていますよね。
伊藤(海) はい。本当は飛行機から船を撃ちたい弾種だけれども「地上を撃っちゃえ」という感じだったんでしょう。ミサイル搭載レーダーが自分で捜索して飛んでいくから、大きな目標にしか向かって行かない。GPSなんていう概念のない時代の兵器ですから、超アバウトなんです。
江崎 ミサイル一つで、今お話をいただいているような、これだけの分析ができるわけですね。