「にしおかぁ〜っ、すみこだよぉ〜」のSM女王様キャラで大ブレイクした、にしおかすみこが2023年1月に出版したエッセイ『ポンコツ一家』(講談社)の紹介文がセンセーショナルだ。

母、80歳、認知症。
姉、47歳、ダウン症。
父、81歳、酔っ払い。
ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。45歳。独身、行き遅れ。

そんな自分の状況を包み隠さず記した『ポンコツ一家』は、しかし“どんな状況だって、病気だって、「ポンコツ」な人はいない。でも、愛を持って私は家族を「ポンコツ」と呼ぶ。”と言う言葉の通り、過度な感動を誘う描写や、ただただ愚痴を並べた文章とは違う、彼女独特の筆致で書かれた素晴らしいエッセイだ。

今回、この本を出版したきっかけから、家族との向き合い方、売れた当時のことや、実際に介護や家族関係に悩んでいる方へのアドバイスまでインタビューに答えてくれた。

きっかけはコロナ禍で仕事がゼロになり・・・

――Web連載の頃から拝読させていただいてたんですが、改めて『ポンコツ一家』を書くことになったきっかけをお聞かせいただけますか?

にしおか この本の初めのほうにも書いたんですけど、コロナ禍になって、緊急事態宣言になって、仕事がゼロになって、家賃が払えなくなったんです。そこで、じゃあ引越し先を探してて、そういえば実家どうなってるかなって思ったら、ゴミ屋敷のなかに母が座ってて「死んでやる!」とか言ってるし……。

――かなり衝撃的な書き出しですよね、僕の母や義理の姉は年に1冊も本を読まない人なんですけど、にしおかさんのこの連載は知ってて、第一回からずっと見てるんです。その第一回は1200万PVを超えたと聞いて“なるほど”と思いました。

にしおか えー! ありがとうございます、うれしい! よろしくお伝えください。

――ただ、こんなに衝撃的な体験をしていたとしても、それを書き留めないと誰にも伝わらないですもんね。この事実を公開する、というのもすごいことだと思うんですが、そもそも書いたというのがすごいと感じました。

にしおか 書くことを仕事にしたいな、という思いはずっとあったんです。コロナ禍で仕事も少なかったけど、でも家でずっとダラダラしてるだけだといけないから、好きなことはしていようって。もちろんこれだけでは稼げません。でもこの先、例えば家族の身に何かあったときに、家でできる仕事があったほうがいいなっていうのもありました。

――たしかに。でも、それだけだと続かないですよね。

にしおか 自分が書いたことで、悩んでいる人が少しでも笑ってくれたり、癒されたらいいなって思ったし、単純に書くことが好きだったから続いたんじゃないでしょうか。

――にしおかさんが書かれた『化けの皮』(ゴマブックス)も読んでいて、あの作品も面白かったです。

にしおか えー、あの本を! ありがとうございます(笑)。

――今回の『ポンコツ一家』を読んで、こんなにも文章力がある方なんだって、改めて驚きました。「母が冷蔵庫に飲み込まれてる」とか、描写にオリジナリティがあって。もともと本は読まれるほうなんですか?

にしおか そうですね。ただ、今回、この本を出すにあたって「どなたに影響受けましたか?」「好きな本は?」とかよく聞かれるんですけど、そこまでいろいろな本を読んでいるわけじゃないし、影響を受けたとか、恐れ多くて名前も出せないくらいの文章力だって自分では思っていて(笑)。どちらかというと私の場合、かなり影響を受けやすいタイプなので、書いているときは逆に影響を受けないように注意したかもしれません。

――なるほど。でも、すごく独特の言語感覚をお持ちだし、文章の1文目で掴んだりするところとか、芸人としてネタを作られていることが関係あるのかなと。

にしおか それで言うと、母には影響を受けているかもしれないです。小さい頃「勉強はしてもしなくてもどっちでもいい、学校も行っても行かなくてもどっちでもいい」と言ってたんですよ。でも、私は気が小さいから行く、みたいな(笑)。

――(笑)。

にしおか ただ、姉が自分を表現することについて、母はすごく大事にしていたんです。そのオマケみたいな感じで、私も夏休みの絵日記とかはすごく介入されて。例えば絵日記だったら、“何月何日、家族4人で海に行きました、楽しかったです”みたいな、時系列で書かないって言われて。“まず、自分がどう心が動いたかを書きなさい。楽しかったって書いてから、誰と行ったかとか、どうしても書きたい事実はあとから付け足しなさい”って。

――すごい! プロの直し方ですね…!(笑)

にしおか (笑)。だから、その絵日記を読んだ先生から、連絡帳で遠回しに「この子は情緒不安定ですか?」って心配されちゃって。

――たしかに、子どもらしくはないですもんね(笑)。

にしおか 本当ですよ!(笑) ただ、構成とかを褒めていただいて、急にそのことを思い出しました。