WBCで見た「村神様」の現在地

今大会で最も注目をされていた日本人選手は(言うまでもなく)大谷翔平、主戦力としてメジャーリーガー勢のダルビッシュ有選手、吉田正尚選手、ラーズ・ヌートバー選手らが挙げられました。メジャーリーグで評価されている彼らが、それに見合う結果を残したのは必然と言えるでしょう。

しかし、同様に注目をされていたのは未来のメジャーリーガーたち。今季オフシーズンにポスティングの可能性が挙げられているNPB現役最強投手・山本由伸選手、最速165kmの令和の怪物・佐々木朗希選手、最年少侍の逸材・高橋宏人選手、そして23歳ですでにNPB現役最強野手の冠を獲得した「村神様」こと村上宗隆選手。

2021年はMVPおよび日本一達成、2022年は歴代シーズン本塁打数2位の56本を放ち、史上最年少三冠王・2年連続MVPを達成し、もはや日本ではやり残したことがない村神様。

本人の意図は明示されていないものの、野球界は彼のMLB挑戦へ期待を膨らませており、最速で2025年オフシーズンにMLB移籍が濃厚とされているなかで世界への挑戦となりました。

しかし、世界の舞台で苦戦を強いられてしまいます。

最初の5試合では24打数4安打(打率.167)、そして打順は4番を任されていながら、打点はたった3点。準決勝・決勝ではサヨナラ二塁打、同点ホームランとそれぞれ貴重なヒットを放ち、ようやく本来の姿の兆しが見えたものの、前年の怪物級の成績 打率.318・134打点・56本・OPS 1.168とは程遠い結果となってしまいました。

世界を股にかけることを期待していたファンからしたら、物足りないかもしれません。

それでも失望するファンは少なかったのではないでしょうか。不調ながらも村神様の持ち味である「選球眼」、そして「パワー」は十分健在で、世界相手でも十分通用したと思います。

まずは選球眼。大会の7試合では打率.231がと低迷をしてしまったものの、四球を6つも粘り出せており(四球数同率5位)、出塁率は.364と相応の数字を残せました。一般的に出塁率.320が平均とされているなか、本人が感覚を取り戻すべく模索をしながらも、しっかり四球を選べた点はさすがと言えるでしょう。

(それでも、本来の村上選手であれば手を出さないボール球を空振りしてしまったり、逆に慎重になりすぎて打ちどころの球を見逃してしまった場面は散見されましたが……)

そして、パワーの最大指標と捉えられる「打球速度」(=どれだけ強くボールを打ったか)を見ると、村上選手が最後の3試合で放った最速打球速度が以下の通り。

110.1mph(サヨナラ二塁打、メキシコ戦)

112.4mph(二塁打、イタリア戦)

115.1mph(ホームラン、アメリカ戦)

特に今大会の村上選手の最骨頂であった、決勝戦のホームラン。ここで叩き出した打球速度115.1mphというのは昨シーズン通して19選手のみが達成した数字であり、大谷翔平選手でも5回、昨シーズン62ホームランも放ったヤンキースの大砲アーロン・ジャッジ選手でさえ8回のみ計測されています。

メジャーのトップ選手に堂々と並ぶ、文字通り桁違いのパワーを示している一打と言えるでしょう。

ニューヨークの大舞台で、ヤンキースのユニフォームに袖を通した村上宗隆選手の姿、楽しみですね。(しつこい)