組織に集まった個人の強みを発揮するためには?
私は、日本の企業(に限らず日本の社会や組織全般)には、この「戦略をもとに戦術をコントロールして全体最適を達成していく」という作戦術的な考え方や視点、言うなれば「作戦術」思考が欠けていると感じています。
誤解のないようにお断りしておくと、私は「だから日本はダメなんだ」と言いたいわけではありません。あらためて言うまでもなく、日本には真面目で勤勉で優秀な人材がたくさんいます。それは日本人に限った話ではなく、最近では日本で働く外国の方々も真面目で勤勉で優秀な人たちが増えてきた印象を受けます。
私が指摘したいのは、そうした優秀な個々人の持つ能力が、「作戦術」思考の欠如によって、さまざまな場面で有効に活用されていないのではないか(だとすれば、それはあまりにもったいない!)、ということです。
また、極めて残念ですが、個々人が全体最適に向けて能動的・主体的に動くようにマネージメントされていないために、個々の能力が十分に発揮されず、結果として組織力に結びついていないのではないかとも思われます。個々人が能動的・主体的に動くと、上に向かって戦略のあり方についての改善意見などが提案されることもあり、さらに組織力が強化されるのではないかと思います。
例えば、私が研修したアパレル企業にしても、個人単位では優秀な人がたくさんいたと思います。だからこそ、(少なくとも私から見て)組織としての戦略が欠如していても、企業活動を長年にわたって維持できていたのでしょう。
しかし、それはまるで“個”が足し合わさって会社になっているようなものです。研修当時は、あまり明確に表現できませんでしたが、今になって考えてみると「個人商店が立派なビルに個々に入っている」というイメージです。はたして、それで組織として機能している(組織の資源が最大限に活用されている、組織として集まった個の強みが最大限に発揮されている)と言えるでしょうか?
日本では、このように“優秀な個人頼み”で、なんとか組織やチームとして成り立っている例は、実は意外と多いように思われます。実際、この話を企業の方にすると「いや、ウチの会社もそういうところがあるんだよね」と同調されることがよくあります。