誰もが憧れた遊撃手・松井稼頭央

坂本と同様に、遊撃手として歴代トップクラスの活躍を見せていたのが松井稼頭央だ。

坂本も、松井稼への憧れを公言しており「小さい頃から松井稼頭央さんが大好きで、稼頭央さんを見てプロ野球選手になろうと思った」とコメントするほど。

現役時代の松井稼は日本人離れした身体能力で、攻守走の三拍子そろった選手だった。通算成績を見ると、日米通算の安打数は2705本を積み上げ、NPBの通算打率.291と3割近い打率を残している。

1年目でスイッチヒッターに挑戦。その後、最多安打2度、盗塁王3度を獲得。2002年には打率.332、36本塁打33盗塁で、スイッチヒッターとして史上初のトリプルスリーを達成し、キャリアハイとなる成績を残した。

守備に関しては、足の速さや肩の強さ含め、高い身体能力を活かすプレーを見せていた。豪快なプレーは目を引くものがあったが、細かいプレーに関しては、若手時代の坂本のように粗さが目立っていた。

ただ、走塁に関しては、圧倒的に松井稼が上に立つだろう。初の盗塁王に輝いたシーズンでは、62盗塁という脅威的な数字を叩き出した。さらに、翌年のオールスターゲームでは、セ・リーグの捕手が古田敦也だったなかで、1試合4盗塁の新記録を樹立しMVPを獲得した。

打撃はメジャー移籍前から華々しい活躍を見せていたものの、飛ぶボールの恩恵を受けていたため、大振りになる傾向もあった。そのため、2003年は最低限の成績は残していたが、バランスを考えると2002年がピークだったと思われる。

時代を牽引した遊撃手たち…鳥谷敬・中島裕之・西岡剛

鳥谷敬は、ルーキーイヤーから阪神の遊撃手として定着した。

2010年には、遊撃手として初のシーズン100打点を記録し、鳥谷のシーズン104打点はいまだに破られていない。(遊撃手シーズン最高打点)

甲子園を本拠地としながら、全盛期は広い守備範囲と堅実なプレーで、数々のピンチを救ってきた。

中島裕之は、守備面で不安定さはあったものの、打撃は当時リーグトップクラスだった。松井稼頭央の後釜として2004年にブレイクして以降は、2006年から2010年まで5年連続3割を記録。2011年は、3割を切ったものの、統一球でありながら100打点を記録した。

西岡剛は、遊撃手として歴代最高打率.346を記録。さらに206安打は遊撃手のなかでも歴代最多である。打撃力もありながら、盗塁王に輝く脚力もある選手だった。

堅実な守備と渋い打撃でチームに貢献した選手たち

坂本や松井稼とはタイプは異なるが、宮本慎也・井端弘和・小坂誠・源田壮亮は、小技ができて守備がうまい遊撃手というイメージが強いのではないだろうか。

宮本慎也は、打撃面で派手さはないものの、いやらしい打撃や犠打のうまさが優れていた。宮本に関しては、日本一に輝いた2001年にシーズン最多となる67犠打を記録。守備に関しては、野村克也氏も一目置いていた。

遊撃手として6度のゴールデングラブ賞を獲得している。三塁手としても、4度のゴールデングラブ賞を獲得しており、複数ポジションに跨がって通算10度の獲得は現在歴代最多タイである。

井端弘和は、宮本からゴールデングラブ賞の座を奪う形で2004年から受賞し、最終的には7度この賞を獲得。井端も派手さはないが、右打ちのうまさはずば抜けている。2013年WBCの台湾戦では、鳥谷敬がスタートを切ったところが目に入りバットが止まったエピソードを語っていたが、視野が広い打撃で多くのチャンスを作ってきた。

中日時代は、荒木雅博と二遊間を組みピンチを防ぎ、打撃では打線も1~2番コンビとして、チャンスを広げるなど、攻守にわたり阿吽の呼吸かのようなプレーが多く見られた。

小坂誠は、「小坂ゾーン」と呼ばれる守備範囲で、数々の場面でチームを助けてきた。遊撃手としての守備得点(221.7)は、歴代最高記録である。入団1年目から遊撃手のレギュラーとして活躍。新人王も獲得した。

源田壮亮は、現役選手で一番守備がうまい遊撃手といっていいだろう。ルーキーイヤーからプロ野球のなかでも高い守備力を誇り、すでに5度のゴールデングラブ賞を獲得している。打撃面ではいやらしさを備え、2023WBCの韓国戦やメキシコ戦では、粘りに粘って相手投手の攻略に貢献した。

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攻守にわたり華のあるプレーヤーから、守備職人・いぶし銀まで遊撃手を紹介してきた。

それぞれの選手に素晴らしい面があるが、現役ながら攻守で記録を残す坂本勇人が歴代の遊撃手たちのなかでも、最強と呼んで差し支えないのではないだろうか。今後、どこまで記録が伸びていくのか楽しみだ。


プロフィール
ゴジキ(@godziki_55)
自身の連載である「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球 2022」をはじめとした「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」などで、巨人軍や国際大会、高校野球の内容を中心にコラムを執筆している。今回、新たに「WANI BOOKS NewsCrunch」でコラムを執筆。Twitter:@godziki_55