『同じ釜の飯を食う』で仲間になれる!
現在、『旅する料理人』としていろんな地域に行って、その場で食材を集めて、その場の人と一緒にご飯を作る活動をしている三上さんは、あるひとつのテーマにたどり着いたという。
「みんな日常的に“おいしい、おいしい”って口々に言っているけれど、本当にそれ、心からおいしいって思ってる? 本当においしいもの食べている人っていったい、どれくらいいるんだろうって思うんです。
映え重視だったり、お店側がお金を払ってインフルエンサーに口コミを書いてもらったり。そして、それに振り回される消費者。そんなフェイクがいっぱいある中で、 『本当のおいしい』にみんながちゃんと気づけない社会になってしまったら、大変なことじゃないですか。真っ当なことをしている人が報われない社会を作ってしまう。みんなの一口の積み重ねが、日本の食事情を作り上げてきたのです。食料自給率たったの37%ですよ。
それに、“うわぁ、おいしいなぁ!”って体が喜ぶ食材を辿ってみると、農薬や化学肥料に頼らず、自然に寄り添った方法で育てられた野菜だったりするんです。
買い物は投票です。そういったものを選択するということは、生産者を支えることになると同時に、子どもたちや未来の人たちが、ちゃんとした食べ物を食べることができる世界を作ることにもなる。私にとって料理は『ちゃんと食べ物と向かい合おうよ』ということを伝えるためのツールだと思ってるんですよね」
ワークショップや出張料理などでも、料理を振舞うだけでなく、どういった人たちが作った食材を使っているかを話す場を必ず設けている。
「親子ワークショップをやると、“うちの子、普段は人参は食べないんですけど、奈緒さんの用意した人参は食べたんです!”とか、よく言われるんですよ。
大抵は、食べないと子どもを叱りますよね。でも、その普段の人参、もしかしたら素材自体に問題があるのかもよ? という思考までいくかどうか。ちゃんと本当においしいもの食べさせてますか? って思うんです」
さらにイベントでは料理を通して、自身の経験から体感した人と人とのつながりについても伝えている。
「『同じ釜の飯を食う仲』という言葉があるじゃないですか。イベントでは大きな鍋を使って料理をするんですけど、まさにそれを可視化させるためなんです。みんなで同じものを食べると不思議と仲良くなる。それが平和の一歩じゃないかなぁって。
今って分断の社会なんて言われてますけど、人と人とのつながりってすごく大事だと思うんです。それに、能登災害支援に関わり続ける中で感じたことは、災害が起きたとき、何が私たちを助けてくれるかって言ったら、水であり、食べ物であり、そしてコミュニティなんですよ。顔の見える関係の大切さ。そういうこともこの活動を通して伝えていきたいですね」
(取材:梅山 織愛)
〇旅する料理人 | NaoMikami | 三上奈緒 | Farm to table

東京農業大学卒。「顔の見える食卓作り」をテーマに、食を通じて全国各地の風土や生産者の魅力を繋ぐ。焚き火を囲み、自然の恵みを料理して、一つの食卓を作る喜びを。食卓から未来を想像する学び場 Around the fire を主宰。Edible schoolyard japanのchef teacherをはじめ、子どもたちの食教育も行う。目で見て肌で感じたものが全て。全ては自らの足で歩く。が信条。海に山に川に、料理のフィールドはどこへでも。石を組み、木でアーチを組み、焚き火で料理する、プリミティブな野外キッチンを作り上げる。Instagram:@naomikami