色に対するイメージを変えたい
高野:大河さんは好きな色はありますか?
大河:私は何色でも結構好きで、あんまり意識してたつもりはなかったんですけど、並べると意外とピンクが多くて、“ピンク好きなんだね”って言われて、ハッとしました。多分無意識でしたね。色に関して思うのは、黒い色を使ってると暗い絵だねって言われるのが悔しいなと感じるんです。黒ってそんなに暗いわけじゃない、“いい色だよ黒も”みたいな気持ちになってるんですかね。黒をもっとよく見せたいみたいな気持ちはすごくあります。結構好きな色だから。
高野:面白いですね。

大河:ハッピーな黒い絵を描けるようになりたいなと思います。
――大河さんが絵を描いている時は、どんな気持ちで描かれていますか?
大河:絵は究極の自分との対話だなと思っていて、自分事を描くのがすごくいいなと思っています。自分のことを描いていますが、見る方に刺さる瞬間が一番面白いって思っていて。絵を描いていると、これはウケるかな? とか色々考える時もありますが、なるべく邪念を抜いて、自分が満足できる絵を描くというマインドでやっています。
だからデジタルからアナログに移行した時も、多分離れた人もいると思いますし、新しく興味を持ってくださる人もいると思いますが、やっぱりそれまでと違うことをする、自分が今まで温めてきたものを1回壊すことになるので、停滞する期間はどうしてもできてしまいます。でも意外とそれをどんどん乗り越えていっているなと。それは自分との勝負をちゃんとしているからだと思っているので、自分を倒すぞという気持ちでやっています。
今の自分、明日の自分に勝つぞみたいな気持ちでやっていく絵が、見たいなと思いますね。高野さんは演技もダンスもされるじゃないですか。絵を描くのも表現だと思うんですけど、違いってありますか。身体の表現と絵を描く表現って、やっている時に違いますか? 私は絵を描くしか表現としてやらないので、どっちもやっているのはすごいことだなと思っていて、もし違いがあるなら聞きたいなと思って。
高野:絵に関しては、ちゃんとした画家さんとは違って、ただ普通に好きで描いているだけですけど、お話聞いていて、本当におっしゃる通りだなと思います。絵は自分のことを反映できると一番いいです。いいなというか、僕もそういう形の絵が好きだなと思います。
演技に関しても自分が出てくるものではありますが、その作品に沿って自分の立ち位置を見極めなければいけないはずなので、個人よりチームワークの面が大きいと思います。でも味が出ている人は自分の個性がしっかり出ているので、そこは共通しながらも意識が違うというか。総合芸術でもあり、物語があるものなので、1回自分のプランを持っていても監督にねじ伏せられると、プランが全く違っていたら根本から考え直さないといけません。
ダンスは、集団で踊るなら揃っているので、演技と共通することもありますが、個性も自ずと出てきますし、体のパーツも絶対違っているので、全く同じ動きはできません。あっても、どれも自分が反映されるのはそうですが、中でも絵は一番それが感じ取れると思うので、表現する技術力さえあれば誰でも素敵な絵を描けると思いますし、実力があった上でその才能や感性が面白い形のアートが好きだなと思います。
大河:なるほど。面白いですね。すごいな。私もダンスがやりたくなってきました。ほんとにいいな。
次回の『お訪ねアトリエ』は、2025年10月3日(金)更新予定です。お楽しみに!!


有機質と無機質を組み合わせたモチーフで、自身が表現を志したきっかけとなった、生と死を描き、その探求を通じて人間が持つ可能性や美しさを見つめ直す。国内外で精力的に作品を発表する一方で、Miu Miuや大阪万博など多分野とのコラボレーションでアートワークを手がけ、作品の根底にある問いを領域を越えて可視化している。 X(旧Twitter):@nori_okawa Instagram:@nori_okawa