同じクラスになったアイドルの音読を、隣の席で聞けたら——。そんな追体験ができる、聞いて焦がれる純文学をお届けする音声コンテンツ『THE FIRST 音読』。

今回、Newsクランチ!読者のみなさまに、その第1回を飾ってもらったHKT48の豊永阿紀、栗原紗英、大庭凜咲、龍頭綺音、秋吉優花、井澤美優、江口心々華、大内梨果、松永悠良、梁瀬鈴雅、10名の朗読を実際に聞いた感想を送ってもらう『THE FIRST 読書感想文』を開催!

今回、『舞姫(著:森鴎外)』と夏目漱石の『夢十夜 -第一夜-』を担当したHKT48、豊永阿紀さんに、実際に朗読してみた感想や、『THE FIRST 読書感想文』への思いをお聞きしました。

自分で登録して聞きました!

――豊永さんは『THE FIRST 音読』で長編の『舞姫(著:森鴎外)』と夏目漱石の『夢十夜 -第一夜-』を担当いたしました。今回、音読に挑戦してみていかがでしたか?

豊永:存在は知っていて、あらすじもなんとなく知っているけど実際に読んだことはない作品がたくさんあって、そのひとつが舞姫だったので、一読者としてありがたい機会でした。文語体ですし、はじめは敷居が高く感じて、同じように知ってるけど読んだことない方がたくさんいると思うんです。そういう方々のきっかけにこの音読がなればいいなと思いました。

――正直、編集部としては豊永さんに『舞姫』をお願いして良かったなと思いました。この長編を、集中力を切らさず朗読するのは、その道のプロの方でも難しい、と音読作品を多数担当しているスタッフの方に言われたんです。その方は豊永さんの音読を激賞されていました。

豊永:嬉しいです、ありがとうございます! 難しい言葉、聞き慣れない言葉もあったのですが、できるだけ難しそうに読まないように意識しました。あと、私は読書するのも、朗読作品を聞くのも好きで、学生時代の部活も放送部だったのもあり、読む側の気持ち、聞く側の気持ちも考えるのですが、私個人の感覚でお話すると、読書をしている時に、登場人物の気持ちを考える余白が好きで、それが文字や本の良さだと感じているので、そこは消したくなかったんです。なので、聴いている方が考えたり感情を入れやすいように、できるだけフラットに読むことは心がけました。

――まさにその通りの印象を受けました。結構感情が揺れ動く作品だと思うんですけど、内容が入ってきやすいのは、フラットに豊永さんが読むのを意識されたからなんだなとわかりました。

豊永:特に、舞姫に関しては豊太郎とエリス、どちらの視点で読むかでガラッと印象が異なる作品だなと感じたんです。性別や年齢、その方のタイミングによっても違うなと思ったので、フラットな方が良いと思いました。

――長い作品ですが、ご自身で聞き返したりしましたか?

豊永:これはこの作品に限らずなんですけど、自分の動画や音声を見るのが本当に苦手で……(笑)。もちろん、歌やダンスの確認など、チェックのためには必ず見るんですけど、基本的には得意じゃなくて、なので自分のこの『舞姫』は冒頭だけ聞いて、大丈夫だな、と思って、ほかのメンバーの作品を聞きました(笑)。どうしてもそわそわして恥ずかしいんですよね。

――今回、豊永さんの音読をメンバーの石橋颯さんはこう評してました。

石橋:阿紀ちゃんはもうひとこと目から圧倒的! 最初のフレーズで物語の中にスーッと入っていけました。すごく聞き取りやすいスピード感だし、元からおしゃべりがすごく上手だから、それが今回の企画ですごく活かされているなぁ〜って思いました。

豊永:そのインタビュー、拝見しました! とても嬉しかった!

――ちなみに、先程ほかのメンバーの作品を聞いたとおっしゃってましたが、印象に残っている作品はありますか?

豊永:すべてのメンバーの作品を楽しみにしていたんですが、特に松永悠良ちゃんの『注文の多い料理店(著:宮沢賢治)』が特に聞きたくて、自分で読み放題に登録してみました!

――ええ! わざわざ登録してくださったんですか!

豊永:これを機に色々な方のを聞いてみようと思って(笑)。なぜ悠良ちゃんのを特に聞いてみたいと思ったかというと、ほかのメンバーはパーソナルな部分を知っているんですけど、悠良ちゃんだけその中でいうとあまり知らなくて、こういう音読に挑戦したいと思う子なんだ、って興味もあり、そもそも「注文の多い料理店」が好きなのもあり、です。実際、聞いてみたら声がすごく可愛らしいんですけど、その中でもちょっとおどろおどろしい強さも秘めていながら、そういうところが過度にならずに、なるべくフラットに表現されているのが素晴らしいなと感じました。

――たしかに、ご本人の雰囲気ともすごくシンクロしているような印象がありました。

豊永:そうなんです。本当に授業中、横の女の子の朗読を聞きながら想像するような感じがあって、とっても好きでした。

――ほかに、印象に残ったメンバーはいらっしゃいますか?

豊永:どのメンバーも本当に印象深いんですけど、(大内)梨果は普段ハキハキ喋るから、そういう雰囲気の朗読になるのかなと思ったら、ベクトルが違うというか……そういえば、歌とかダンス以外の表現を見た記憶があまりなかったので、すごく新鮮で面白かったです。

音読は嘘がバレてしまう

――夢十夜ではスタートの第一夜を担当されました、こちらで意識されたことはありますか?

豊永:こちらは、『舞姫』とはまた異なった、夢をテーマにしたお話なので、世界観が大事な作品だなと思い、自分なりの解釈で感情を込めたり、起伏をつけて読みましたね。こちらの作品は、その方が、より聞いている方々に伝わるんじゃないかと思ったんです。

――多分、夢十夜の場合は第一夜から聞く方が多いんじゃないかな、と思うのですが、本当に豊永さんにお願いして良かったなと思いました。それくらい、完璧で、過不足のない朗読を披露してくださいました。

豊永:いえいえ、滅相もないですけど、ただ、今回私達がやるうえで凄く嬉しかったのは、ワニブックスさんが、“このメンバーはこういう魅力があるから、この話が良いと思います”など、理由をきちんと全メンバーに伝えてくださったことです。あれがあったからこそ、メンバーは自分の役割や、良い所を理解して挑めたと思っています。

――いえいえいえ! ありがとうございます、お互い褒め合ってますね(笑)。

豊永:(笑)

――豊永さんは特にずっと朗読に興味があったということでしたが、今回、あらためて朗読に挑戦してみていかがでしたか?

豊永:見えないからこそ、無限の受け取り方がある表現だなと思いましたし、いつも以上に細やかな表現が必要だなと思いました。嘘もバレちゃうんだろうな、とか。

――というのは?

豊永:知らない言葉、自分に馴染んでない言葉はバレてしまうだろうな、と感じたんです。初見で読むのと、解釈して読むのは全然違う。歌もただ歌うのと、きちんと意図を理解して歌うのでは全く聞こえ方、響き方が違ってくると思っていて。声だけの表現ということで歌と通ずる所があるな、と感じました。

――なるほど!

豊永:私のファンの方も、まず聞いてみて、そこでちょっと難しいなと感じたら、文章で読んで理解して、また読んでみるね、って言ってくれたり、通勤時間に少しずつ聞いてるよ、とか、色々な楽しみ方をしてくれていて、とても嬉しいです。

――ファンの方のお話も出たところで、今回、「THE FIRST 音読」を対象にした「読書感想文」コンテストも行うのですが、豊永さんが担当した作品、こういうところを意識して聞いて欲しいなどはありますか?

豊永:ここまで私の思ったこと、感じたことをお話したんですけど、まずは何も情報を入れずに聞いて欲しい。『舞姫』でいうと、豊太郎とエリス、どちらに感情移入するかで違ってくるし、当時の時代性を鑑みた感覚で感想を持つかたもいれば、今の時代と比較して感想を持つかたもいらっしゃると思うんです。正解がないからこそ楽しいし、私も皆さんの感想が気になります。個人的には、『舞姫』は誰に感情移入するかは興味がありますね。『舞姫』は特に長い作品ですが、わからない所があれば調べて読んでも、また味わい深い物があると思うので、オススメしたいなと思います。