瑞希と渡辺未詩が再び相まみえる!

9月に入っても猛暑日が続き「もう夏だか秋だかわからない!」という2025年。秋の風物詩を味わうにも風情がないな、と思ったりもするが、これが令和の新常識になっていくのかもしれない。

ただ、けっして悪いことばかりではないのだ。

9月20日(土)、大田区総合体育館で東京女子プロレスのビッグマッチ『WRESTLE PRINCESS Ⅵ』が開催される。例年、この大会は“秋の大場所”としておこなわれているのだが、こんなにも暑い秋だったことは過去の大会ではちょっと記憶にない。

まさに「真夏の延長戦」的なムードが漂っているが、今大会の主役たちが真夏のヒロイン候補として注目を集めた面々ばかりなので、夏の勢いをそのままリングに持ちこんで灼熱の闘いを魅せてくれるのではないか? という期待が高まってきている。

メインイベントで瑞希が保持するプリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦するアップアップガールズ(プロレス)の渡辺未詩は、真夏の最強決定トーナメント『東京プリンセスカップ』で悲願の初優勝を果たして、挑戦権をゲットした。

実は今年の1月4日、後楽園ホールでも同じ顔合わせでのタイトルマッチが実現している。その時点ではチャンピオンだった渡辺未詩が王座を陥落。この日、以降、瑞希がベルトを堅守したまま春、夏を超えて、秋を迎えた。つまり、今回はそのとき以来のリターンマッチということになる。

王座奪回をめざしてトーナメントを勝ち抜いてきた渡辺未詩だが、決勝戦では揺れる心を抱いていた、という。

「プリンセス王座だけを目指して勝ち抜いてきたんですけど、いざ、あと一歩で手が届くところまできたときに『でも、私が瑞希さんに負けたのって、今年のお正月だったよなぁ〜。1年のうちに2回、同じカードのタイトルマッチが組まれるって、お客さん的にはどうなんだろう?』って考えちゃったんです」

プロレスとアイドルの二刀流で活躍中の彼女は、時としてアイドル的な心情が沸きあがる。アイドルとしてお客さまファーストで考えたら「お正月のライブと秋のコンサートが同じ中身でいいの?」となってしまう。ちょっとプロレスラーにはない発想だ。

そして見事に優勝した渡辺未詩は「トロフィーを手にした瞬間、思わず瑞希さんをリングに呼んで、挑戦表明しちゃいました、アハハハ!」。まさに本能のままにチャレンジ。王座陥落から8カ月以上、溜めこんでいた悔しさには逆らえなかった。

このままの勢いで突っ走りたいところだが、正攻法でいくと、試合巧者の瑞希の思うつぼにハマりかねない。1月4日と同一カードなれど、王者と挑戦者の立場が逆転し、渡辺未詩には「東京女子プロレスの全王座と全トーナメント完全制覇』という新たな勲章が加わった。これだけ状況が変われば、試合内容だって大きく変わってくるはず。大注目の一戦である。

▲瑞希(写真左)と渡辺未詩(写真右)の勝負は激戦必至

「夏のヒロイン」遠藤有栖はジェイダと激突!

その渡辺未詩にトーナメント決勝で惜敗してしまった遠藤有栖。彼女こそが2025年の東京女子プロレスにおける「夏のヒロイン」だった。

昨年秋の『WRESTLE PRINCESS V』ではタッグチャンピオンとして防衛戦に臨んだ彼女だが、残念ながら敗退。以降、なかなか結果を残せない日々が続いた。タッグパートナーの鈴芽がひと足先にインターナショナル・プリンセス王座を獲得し、アメリカでも防衛戦をおこなうなど、目覚ましい躍進をとげただけに、もどかしい1年でもあった。

それでも腐らずに着々と力をつけてきた遠藤有栖の底力が夏のトーナメントで爆発。大きな壁である山下実優を撃破すると、準決勝では同世代のライバルながら、いままで一度もシングルでは勝てていなかった荒井優希に完勝。この夏の、というよりも、ここ数年の宿題をいっぺんに片付けたかのような活躍ぶりに、多くのファンが「今年は有栖が優勝するのでは?」と熱い期待を寄せた。

惜しくも優勝には届かなかったものの、1回戦から決勝戦まで、すべてが好勝負だったこともあり、遠藤有栖は高く評価された。

「決勝戦の日もファンの方から『負けたけどよかったよ!』とか『2位だったけど、俺の中では1位だ!』とか、本当にたくさんの言葉をいただいて、ちょっと気持ちよくなって帰ったんですけど、家でひとりになったら『あっ、トロフィーもなにもない……』と現実に戻って落ちこみました。評価していただけるのは最高にうれしいことなんですけど、やっぱり形に残るものが欲しいですよね。大田区ではたくさんの人に褒められた上で、しっかりベルトを持って帰りたいです!」 

前王者の宮本もかの返上により空位となったインターナショナル・プリンセス王座決定戦として、遠藤有栖はアメリカの強豪、ジェイダ・ストーンと闘う。チャレンジャーではなく、あくまでも同格としての対戦だけに「自信はある、怖さはない」という遠藤だが、ちょっとした不安は抱えている。

「鈴芽さんとジェイダの試合をセコンドとして間近から見ていたんですけど、思わず『あなた、本当に同じ人間ですか?』とジェイダに言いたくなりました。どうしたら、そんな動きができるの?ってことをどんどんやってくるじゃないですか? まだ、私が見たこともない動きや技を出されたら、と思うと、ちょっと不安です……」

ジェイダもここでベルトを巻けば、今後の来日も確定するし、最近、アメリカでの興行を頻繁に開催するようになった東京女子プロレスだけに、ベルトを巻いたまま日本からの刺客を迎え撃つ、という図式になれば主役にもなれる。ある意味、遠藤有栖以上にこのベルトを欲している存在なのだ。まったく勝負の行方が見えない!

▲ジェイダ・ストーンとの戦いに挑む遠藤有栖