われわれが見失った日本人の「強み」とは

新保 一方で、先ほどグローバリズムのお話がありましたけども、たとえば今、私たち日本人の消費・生産ですとか、たとえば食糧という問題においても、中国という存在はかなり私たちの生活に密着していて、欠かせない状況になっていると思います。自国生産、自国消費という意味では、中国という国はやはり必要であるとお考えになりますか。

大石 私はそう思いますよ。中国の生産力の大きさ、あるいは低価格で提供する能力の大きさを考えますと、私たちはまだまだ中国と仲良く貿易をしていかなければなりません。そういう国ですよね。ただし、では「すべてを中国に頼り切っていいのか」ということになりますと、それは安全保障上とは言わないにしても、国民の生命・財産を守る政府の立場からいっても、「危ないことなんじゃないか?」という自覚が、私たちに生まれたように思います。つまり、コロナを契機として、私たちの生活をあらためて多角的に点検をして、「どの程度の自給率を持つべきなのか」という議論を深めていく必要があるのではないでしょうか。

▲現状の高い中国への依存度を見直しを提言する大石氏

新保 国土交通省のOBである大石さんは、「国土学」という観点からもですが、やはり日本だけではなくて外国のことをきちんと知ったうえで、日本という独特な島国の文化や経済、状況をきちんと見ていかなければいけないと常々仰っています。今回のコロナに関しても、日本人だからこその強みがあるとお考えでしょうか。

大石 強みといえば、われわれ日本の長い歴史の中で、たとえば江戸時代には7万もの村があったわけで、それぞれの集落で閉じた暮らしをしていたわけです。したがって、われわれは「集落における仲間との調和、あるいは仲間を裏切らないといったような考え方が最も大事なんだ」と考えてきたわけですね。ところが、ヨーロッパ人が持ち得た個人主義によって、個々人がばらばらであればいい、個性が大事なんだといったような風潮にずっと流されてきたんです。当然アメリカに倣ってるわけですが、そういった考え方に流されてしまった。その個人主義をわれわれが尊重し過ぎたということが、日本人を弱くしてきたように思うんです。

新保 なるほど、仰ることがよくわかります。