鉄とガラスを取り入れた近代建築

産業革命後に生産されるようになった新素材の鉄、ガラス、コンクリートを使い、アール・ヌーヴォー様式やアール・デコ様式などの装飾技術が、建築に取り入れられた。

オルセー美術館は、1900年のパリ万博に合わせて高級ホテルを併設した鉄道駅(オルセー駅)として、ヴィクトール・ラルーにより設計された。1986年に19世紀美術専門のオルセー美術館として生まれ変わった。

▲オルセー美術館 イメージ:PIXTA

パリ・オペラ座は、シャルル・ガルニエ設計により1875年建設され「パレ・ガルニエ」と呼ばれる。第二帝政期のボザール様式で、外観はネオ・バロック様式の絢爛豪華な装飾である。天井には戦後になって、シャガールによって『夢の花束』が描かれた。

1882年に着工したが現在もまだ工事中、バルセロナにあるアントニオ・ガウディ設計のサグラダファミリアは、ゴシック様式が基調だが、カタルーニャ独自の建築技術やイスラム風の装飾などを融合した、ガウディ独自の考えが反映されている。

フランス革命100周年記念として開催されたパリ万博の目玉だったのがエッフェル塔(1889年)。鋼鉄が大量生産できず錬鉄を使った。2階にはレストラン「ジュール・ヴェルヌ」があり、エマニュエル・マクロン大統領がドナルド・トランプ大統領夫妻をもてなして話題になった。

日本の近代建築教育に大きく貢献したジョサイア・コンドルの作品はあまり残っていないが、ニコライ堂(1891年)はビザンティン様式の教会建築である。

ノイシュヴァンシュタイン城は、バイエルン王ルートヴィヒ2世によって建築された白鳥城とも呼ばれるドイツで人気No.1の城である。伝統的な建築様式でつくられた中世のお城のように見えるが、19世紀に建てた鉄骨組みのコンクリート造建築物である。リヒャルト・ワーグナーのパトロンでもあったバイエルン王ルートヴィヒ2世が、夢の世界を具現化したものだ。

▲ノイシュヴァンシュタイン城 イメージ:PIXTA

ロンドン郊外にあるキュー王立植物園は、世界最多の植物コレクションで知られる研究機関で、ヴィクトリア時代のガラスの温室である「テンペレート・ハウス」(1863年)が、大規模な改修工事を終えてオープンした。デシマス・バートン設計である。

ヴィクトール・オルタは、アール・ヌーボー様式を装飾芸術から建築に取り込んだ最初の建築家といわれる。設計したブリュッセルのタッセル邸(1898年~1901年)は、建築にアール・ヌーヴォーを融合させた世界最初の建築として知られる。

フランスにおけるアール・ヌーヴォーの代表者は、建築家エクトール・ギマール。パリ16区のアパルトマンであるカステル・ベランジェ(1898年)は、パリで初のアール・ヌーヴォー建築。新素材の鉄とガラスを大胆に使用したこの建物で、ギマールの名が急速に広がった。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。