イタリア料理店「リストランテ・フローリア」オーナーシェフであり、YouTuberとしても活躍するChef Ropia氏が初の著書『極上のおうちイタリアン たった3つのコツでシェフクオリティー』(小社刊)を上梓した。そこでイタリア料理界の巨匠である、南青山「アクアパッツァ」シェフ日髙良実氏とイタリアンの過去・現在・未来を語り尽くした対談をお届けする。

寝場所と賄いがギャランティー

Ropia まずはじめに日髙シェフがオーナーの店名について教えてください。『アクアパッツァ』っていう名前を付けた由来を伺えますか?

日 髙 私は1986年から1989年にかけて、ちょうど3年間イタリアにいたんですよ。で、最初の1年半で、フィレンツェとミラノの二つ星や三ツ星のお店で修行していたんですけど、その時に「こういう料理を俺は求めてイタリアに来たのかな?」っていう迷いが生じた。二つ星三ツ星の店でしたが、イタリア料理というよりフランス料理に近いような店だった。

それで、そのオーナーとシェフに相談したのね。「私は日本人で、イタリアの料理を勉強しに来ました」と。「何を学んで帰ったらいいですか」と。すると「イタリアの地方に行って料理を見て来い」と。そうする方が君にはいいんじゃないかっていう風に言われて。で、ミラノの三ツ星のオーナーから『ダル・ペスカトーレ』っていうレストランを紹介してもらったのね。今ではもう20数年間、三ツ星を維持している名店なんですけど、当時は田舎の一ツ星のお店で。そこで色々お世話になった人がアントニオ・サンティーニさんっていうオーナーです。

Ropia はい。

日 髙 まずそこで修行していたら「良実、いろんなところ紹介してあげるから」とガイドブックを見ながら10数件電話してくれたのかな。秋だったらトスカーナに美味しいスープがある。じゃあ名物で出しているお店に、まず電話してっていう風に。私は、みんな知り合いのお店なのかなって思っていたら、全然知らないところに電話をかけてくれているんです。「私はダル・ペスカトーレのアントニオ・サンティーニという者ですが、うちに日本人がいます」と。で、「給料はいらない。ただ寝る所と賄(まかな)いを食べさせてくれ」と。それでも、結構断られたんだよね。

Ropia その条件でも断られちゃうんですね。