本当の死者数を暴こうとした記者を拘束

李文亮医師の死をきっかけに知識人たちが言論の自由を訴えても、習近平政権は彼らの主張に耳をかそうとしませんでした。それどころか、さらに報道統制を強め、新型コロナウイルスの真実を暴こうとする人たちを弾圧し始めました。

李文亮の死の悲しみもさめやらぬ2月12日、北京の弁護士で「公民記者」として、新型コロナウイルスによる本当の死者数を暴こうと独自調査取材をしていた陳秋実が、公安当局に拘束されました。

陳秋実は1月23日、武漢市が都市封鎖された翌日に武漢入りし、公民記者として動画を撮影し、ネット配信などで実況しながら武漢市の新型コロナウイルス感染状況の真実を伝えると宣言。病院や火葬場などを独自で取材し、死者数の不自然さに注目していました。

▲武漢市の長江沿いの大通りにある沿江大道 出典:Wikimedia Commons

衛生当局が発表する武漢の死者数と、火葬場が受け入れている遺体の数がかなり違うことは、多くの市民が気づいていました。旧正月前から火葬場はフル稼働しており、平時の4、5倍の遺体を焼いており、そのうち6割が病院ではなく自宅から運ばれていると、火葬場関係者がネットメディア「大紀元」の電話取材に答えています。

2月3日を例にとれば、127人の遺体が荼毘に付されたが、新型コロナウイルスが死因の遺体は8人、疑似感染は48人。衛生当局が発表した死者数には、疑似感染による死者は含まれていません。診断や治療も受けずに自宅で亡くなった人も多いのではないか、という疑いがもたれていました。

陳秋実は2月6日から忽然と消息が途絶えました。彼が失踪する直前まで連絡を取り合っていた匿名の武漢市民によれば、陳秋実は病院とは違う居住区で単独で軟禁状態におかれていると、米国政府系華字メディア『ボイス・オブ・アメリカ』に証言しました。

また、陳秋実の親友である徐暁東も、彼が監視状態に置かれているとの説明を“内部人士”から受けたとYouTubeを通じて明かしました。公安当局は真実が暴かれるのを恐れて、彼の身柄を拘束したようです。

さらには、武漢のビジネスマンで、やはり独自に取材活動して、その結果をSNSで発信していた方斌も2月10日に私服警官に連行されました。方斌も病院から運び出される遺体の多さに注目していました。3月下旬になっても彼らの行方はわかりません。世界中の人々が彼らの安否を気にしています。