ヤンキースが大谷翔平選手を獲得するための秘策とは!?

ただ、残念ながらヤンキースには大谷選手獲得を阻むチーム事情がいくつかあります。

1:指名打者(DH)には、ジャンカトロ・スタントン選手がいる

まず最大のハードルが、大谷選手が打者として試合に出場する際に使用するDH枠が、すでに埋まっている点。しかも、現在ヤンキースのDHを務めるスタントン選手は、契約年数が残り5年(除く2022年)もあり、なんと2027年まではDHが空かない見込みです。

一応、スタントン選手は登録上ではDH兼外野手ではあるものの、実態としては怪我が多い影響で、外野手としてのフルタイム起用は厳しく、少なくともスタントン選手と大谷選手が同チームで共存をすることは困難だと思われます。

2:大谷選手の推定年俸がチームの予算内に収まらない

そして次に高いハードルは、大谷選手を獲得するに必要であろう超大型契約が、ヤンキースのチーム予算内に収まらない点。現地メディアによる市場予測などでは、予想年俸が4,500〜5,000万ドル(≒65〜72億円)、契約年数は7~10年の規模が必要とされています。

一般的に、どんな潤沢な球団でも予算2億5,000万ドル前後(≒359億円)が限界とされているなか、仮に大谷選手がFAでヤンキースに加入するとしたらどうなるのか。下の表を見るとわかるとおり、合流する2024年でも、たった4名の選手に既に1億ドル弱(≒144億円)の年俸が予算を圧迫しており、残り最大1億5,000万ドル(≒216億円)で22選手を集める必要があります。

▲ヤンキース2024年以降残存契約

しかも、ここで考慮する必要があるのは、前述のジャッジ選手の去就。今季FAになり、もちろん他球団への移籍の可能性もあるものの、ジャッジ選手は実質ヤンキースのキャプテン的存在であり、ヤンキースにとっては不可欠なので再契約をしない路線はないと思います。そうなると、ジャッジ選手の予想年俸4,000万ドル(57億円)以上が、さらに8~10年程度チームの予算に乗っかることになるので、なおさら大谷選手分の予算がなくなります

仮に現在の残存契約に、ジャッジ・大谷両選手の年俸を加えた場合、26人ロスター(選手登録枠)のうち、たった6選手に2億ドル(≒287億円)近くを費やすことになり、残り20選手を5,000万ドル(≒72億円)で集めることは現実的とは言えないでしょう(アスレチックスやレイズは、まさにそれを上手にやっていますが……)。やはりFA獲得は、あまり現実的ではないかと思われます。

3:逆にヤンキースへ移籍するシナリオは?

なかなか致命的なハードルを2つ挙げましたが、ここはメジャーリーグ。どんなクレイジーなことも起きうるし、大谷選手はクレイジーなことを起こしてでも獲得すべきレベルの選手。現実的ではないものの、あえて大谷選手のヤンキース入りが実現するためのシナリオを考えてみましょう。

まずは、スタントン選手の放出。契約が5年1億5,000万ドル(≒216億円、うち球団負担は1億3,000万ドル≒186億円)も残っているほか、実質DHのみでしか運用できない点、近年の故障癖、そして年俸に見合わない成績、トレード市場における価値は著しく低いでしょう。

それでもトレード放出する算段は、「ヤンキースが契約の大半を負担したうえで放出する」「若手有望株と抱き合わせで放出する」の2つがあります。この場合は予算問題もあるので、前者は現実的ではなく、後者の方法で「若手有望株をあげるから、スタントン選手と契約を肩代わりしてくれ」と、どこかのチームへ持ちかけるしかありません。こうすれば、まずはDH枠問題が解消されます。

そして、もう1つはジャッジ選手と契約更新をしない選択肢。これにより、現段階では実質的に見込まれている大型契約分がなくなるため、大谷選手の年俸を確保できます。ただ、前述の通りジャッジはヤンキースの顔であり、相当厳しい判断になります。実質的にジャッジのチームから大谷のチームへバトンタッチする形になるので、そこまで大々的な変化をもたらす決断を下すことができるか。

記事では「大谷選手とジャッジ選手、夢の共演あるか!?」をテーマに掲げましたが、実態としてはヤンキースに限らず、どのチームもどちらか片方しか迎えられないのが実態だと思われます。やはりチームの中核となるスターとはいえ、たった2選手に年9,000万ドル(≒129億円)を費やすのは現実的ではございません。現状の結論としては「やはり共演は難しい」となります。

でも、ヤンキースファンとしては夢を見たいですよね! 私の想像を遥かに超えるクレイジーな手法で両選手を獲得する、金満で傲慢なヤンキースに、ほんの僅かな期待を胸に秘めておきます。

▲大谷翔平選手がヤンキースへ移籍する可能性はあるのか? 写真:AP/アフロ

プロフィール
KZilla(ケジラ)
ニューヨーク・ヤンキース、およびMLBの魅力をTwitter、note、ラジオなどで発信し続ける注目の野球アナリスト。ニューヨーク育ちの英語力を活かした情報収集力と分析力は、コアなファンからも高い評価を得ている。アーロン・ジャッジがア・リーグ新記録となる62号を打ったら号泣することが確実視されている。Twitter:@TokYorkYankees、note:KZilla|note