芸能界にいても相撲を盛り上げることが僕の役割

力士時代同様、芸能界でもさまざまな経験を糧としながら、少しずつ前へと進んでいくことを誓う豊ノ島。現在、目の前のことに全力を注ぎ、なおかつ、先をまっすぐに見据えながら目指すべき道を進む。その姿勢は、少年時代に贈られた言葉によって培われてきた。その座右の銘を教えてくれた。

「小学校の頃の監督の言葉なんですけど『三年先の稽古』。小学生でしたから、なんのこっちゃって初めは全然わかっていませんでした(笑)。だけど大人になるにつれ、その意味は身に染みてわかるようになったんです。入門するときも、その先生から“お前は三年先の稽古だぞ”と言葉をかけてくれたんです。他の力士や、目の前の白星だけを意識せず、もっと先にある目標のための今日、なんだと」

相撲界から離れた現在も、目先の結果に一喜一憂することなく、その言葉を体現していきたい、そう言葉を続ける。また今後、実現していきたい目標も聞くと、柔らかい表情を変えないまま、胸の内を明かしてくれた。

「いずれは、自分が中心となった企画や冠番組なんかをできたらいいなと思っています。今の自分が言うのもおこがましいですけど(笑)。例えば、地元でラジオ番組なんかもできたらうれしいですし、なんでもいいんで僕がメインとなった仕事を定期的にやれたらいいなと考えています。

あとはやっぱり、相撲関係の仕事ですね。芸能界にいても、その活動のなかで相撲界を盛り上げる、それがこれからもずっと自分の役割だと思うんで。相撲関係の仕事もどんどんやっていきたいです」

また、今年2月には自身が手掛ける、地元高知県宿毛市での少年相撲大会「豊ノ島杯」が3年振りに行われ、今大会で10回目を迎えた。2011年に初めて開催されたこの大会は、相撲人口の減少を少しでも止めることができればと続けてきた。しかし豊ノ島は、競技の裾野という観点とは別の考えも持っていると言葉に力を込める。

「最近は子どもたちの相撲離れが顕著なんですよね。大会を始めた頃、相撲を取ったことのない子が本当に多かったんです。僕が子どもの頃はみんな、遊びのなかでも相撲を取っていたじゃないですか。もちろん、大会を通じて相撲人口が増えることも目指していますが、一人でも多くの子どもに相撲を経験してもらいたい。

そして将来、その子たちが大人になったときに“昔ね、相撲を取ったことがあるんだよ”と話してもらえるようになってくれたら。そのためにも、大会を途切れさせないようにしていきたいですね」

▲一人でも多くの子どもに相撲を経験してもらいたい

子どもたちが相撲を取る、昔は当たり前だった光景を日常によみがえらせたい。元力士ならではの言葉には、未来を担う子どもたちや、自身を育ててくれた相撲に対する深い愛情が込められていた。

始まったばかりであり、これから長く続いていく芸能活動のなかで、豊ノ島の相撲への思いがどんな形で表現されていくのか。さまざまな場面で目にするであろう、その大きな背中を今後もさらに追いかけていきたい。


プロフィール
 
豊ノ島 大樹(とよのしま・だいき)
1983年6月26日生まれ、高知県出身。2002年1月場所に初土俵、時津風部屋に入門。最高位は東関脇。2020年4月に現役を引退。引退後はNHK大相撲中継解説に登場し、言葉巧みで的確な取組の解説が好評であった。2023年1月、人々の後押しや40歳という年齢を契機に日本相撲協会を退職、芸能界でタレントとして相撲界を応援する道に進み、さらなる活躍が期待されている。Twitter:@toyonoshima0626、Instagram:toyonoshima_daiki