報道記者で身に付けた感覚を動画に落とし込む

テレビ局で外勤記者が取材をしてきた事件に関する素材から、ニュース番組を作るための編集やディレクションを担当していたなつこさん。具体的には、決められた秒数のニュース原稿に合わせて流す映像を決めたり、アナウンサーの原稿読みに合わせてサブで映像を切り替えたりしていた。

「毎日10時間以上も働く忙しい日々を過ごしていたので、当時のことはあんまり記憶がないんですよね(笑)」

そう当時を振り返るものの、やりがいを感じることは多かった。

「1つのニュースが報道されるまでには、100人単位の人が関わっています。取材班・カメラマン・編集班がいて、そのなかでもいろんな役割がある。そして、多くの人が協力して作るニュースは、何百万人の方に届く可能性があります。そういったダイナミックさに魅せられましたし、社会的意義のある仕事だと思っていました」

しかし、厳しい労働環境やヨハンさんが1年半も日本に入国できなかったことを鑑み、なつこさんはテレビ局を退職。2021年4月にはスウェーデンに戻り、ヨハンさんとの生活を再開させることに。二人の日本移住の夢は儚く終わってしまったが、報道記者の経験は今後のキャリアと向き合うきっかけとなった。

「スウェーデンに帰ってから、“働くってなんだろう”とか“人の役に立つってなんだろう”と考えました。そんなときに思い浮かんだのが、『ふたりぱぱ』というYouTubeチャンネルを運営しているみつおさんでした。

報道の仕事もすばらしいけど、みつおさんは自分のメッセージを自分なりに届けようと、よりチャレンジングですばらしいことをしているなって」

最初のスウェーデン移住の際、北部にある観光客に人気の都市・ルレオの日本人コミュニティで出会ったみつおさん。そのステキな人間性に触れたなつこさんは、YouTube開設を猛プッシュし、『ふたりぱぱ』チャンネルの開設を実現させると、マネージャーとしてYouTubeの運営に携わってきた。

2度目の移住でも、改めて『ふたりぱぱ』チャンネルの運営にジョインすることとなる。みつおさんの動画編集に関わるなかで、なつこさん自身も発信したいと思うように。

そして、2022年5月、スウェーデンでの生活を発信するスタイルで『犬とわたしと北欧暮らし』はスタートした。報道記者で培ったスキルは、YouTubeでも生かされている。

「誰がどんなタイミングで見ても、20秒から40秒で内容がわかるようにという意識は、報道記者時代に身に付けた感覚です。誰にとってもわかりやすい説明がされていて、迷わずに“そういうことなんだ!”って納得できるような動画作りを心がけています」

“スウェーデン人、人間力高っ!”

スウェーデンに移住して7年目。スウェーデンの生活で楽しいことは、自然が近くて犬と暮らしやすいことだという。

「私は趣味があまりなかったんですけど、ブライアンとジェマがやってきて、スウェーデンで生きる目的や人生の楽しみをもらいました。

ケージの中で保管してはいけなかったり、ペットだけでのお留守番は6時間までと決められていたり、スウェーデンでは犬に優しい法律が整備されているので、犬と暮らしやすい環境でありがたいなと思っています」

▲ジェマ(左)とブライアン(右)に人生の楽しみをもらった

また、慣れないものとも上手に付き合っていることがある。太陽が沈まない夏の百夜と、反対に太陽が出る時間が短くなる冬の極夜だ。

「12月は日照時間が4時間あるかないかで、気分的に落ち込みますが、暮らしてるとあっという間です。ブライアンとジェマからもらう癒しで、乗り越えられているところもありますね。

一方で、夏になると5~6週間の長期休暇があるんです。みんなそこに向かって、お金を貯めたり、予定を立てたりして、冬の時期を乗り越えているのだと思います」

そのほか、スウェーデン人のたくましさには驚くことが多いそう。

「男女関係なく、生きていくために自分でやることの範囲が広いんです。例えば、自転車のチェーンが外れた際には義妹が直してくれましたし、洋服のサイズ直しも、家の修理も自分たちで全部おこないます。

日本ではサービスに頼っていたことも、スウェーデンでは当たり前に自分たちで解決する姿勢を見て、スウェーデン人、人間力高っ! かっこいい! 自分もそうなりたい! と思いましたね」

チャンネルで配信されている本格的なDIYも、日本では珍しさがあるが、スウェーデンでは普通のことだと話す。これまでYouTubeの編集作業をしているスタジオやゲストルーム、外壁と多数の大規模なDIYをしてきたが、その進捗は理想の3割にも満たないのだとか。

「自分たちで作業できない水回り以外はすべて自分たちでやろうと思っていて、一つひとつ進めています。今後は、外テラスの塗装や暖炉の設置にもチャレンジしたいなと思っています」