11月初旬、常磐線に揺られて僕は茨城県龍ケ崎市駅に降り立ちました。サッカー日本代表として活躍する守田英正選手をはじめ、144人ものJリーガーを輩出した大学サッカー界屈指の名門、流通経済大学の本拠地です。

というわけでサッカー大好き芸人である僕、カカロニすがやが大学サッカー部の練習に探訪し、インタビューを行う本コラム、今回は流通経済大学の練習を見学させていただきました。

茨城ダービー前に合宿を敢行

今回の練習場所は普段、流通経済大(以下、流経大)が練習しているフットボールフィールドではありません。

関東大学1部リーグの最後の2試合を残して降格圏に沈んでいた流経大は、週末に控えた首位・筑波大学との茨城ダービーまでの期間、急きょ合宿を開いていたのです。

というわけで流経大からプロ入りした全ての選手を育ててきた名伯楽、中野雄二監督が駅まで車で迎えに来てくださることに。直々に!?……というのも、中野監督はこうやって電車で取材に来てくださる方は全て自分が車で案内するというこだわりがあるのだそう。

実はロシアW杯のときに現地で偶然お会いして一緒に食事をさせていただいて以来、中野監督には度々お世話になっているのですが、いつも、時間が足りないと感じるくらいお話が面白い方なので、この日もドライブの時間が増えたのは幸運でした。

さて、この日の練習は潮来にある前川運動公園人工芝サッカー場で行われます。茨城県は潮来や波崎、神栖などグラウンドが多く、よくサッカー大会が開かれるのですが、流経大からも審判を貸し出したり地域貢献をしていることから、急遽の合宿でも地域が対応してくれるのだとか。

中野監督は流通経済大学・スポーツ健康科学部の教授であり、課外活動強化部推進室長として他部の生徒からも日々、就職や私生活面を含む相談を受けたり、JFA評議員も務め、こうした地域との繋がりも大切にして、僕のことも迎えに来てくれて、一体いつ休んでいるのという感じ。ちなみに丸一日休みは何年もないそうです。それでも、サッカーが、大学サッカーが面白くて楽しいそうです。

なんて話をしているうちに練習が始まります。合宿に参加しているトップチーム25人の選手たちがユニフォームを着て、走行距離を測るGPSを首の後ろに装着して、ピッチへ。部全体だと、現在部員252人・7チームが寮生活を送っているそう。

▲練習前にミーティング

また、興味深いのは1軍から7軍という階段状の組織ではなく、一段上にいるトップチームの周りに6つのチームが丸く囲んでいるような組織形態だということ。

中野監督曰く「優秀なスタッフがそれぞれ見てくれているので、興味深い選手がいればどのチームからも即トップチームにあげます」とのこと。

例えば、この日のメンバーで言うと1年生の葛西亮太選手は昨年の流通経済大柏高校でベンチにも入っていなかったのだそう。無名の選手を見出すのは流経大の伝統ですね。

歴代でも、金光大阪高校の守田英正選手、埼玉平成高校の佐々木旭選手、東京学館高校の根本健太選手と、高校時代には無名に近い選手達をプロの舞台に送り込んできました。

ちなみにこの日は特殊な状況なので25人でしたが、トップチームの人数も流動的でいい選手が多ければ40人ほどで動くこともあるそう。

「ちょっと生意気な学生も好きですよ(笑)」

練習が始まり、まずは学生トレーナーの指示の下、ストレッチから。聞けば選手以外のプロを目指す目的で流経大に入学してくる生徒もいて、例えばトレーナー志望であれば、世代別代表のトレーナーも務める小粥智浩氏の下で現場に出て学べる素晴らしい環境です。実際に選手以外で入部してきて、Jリーグチームのトレーナーや運営、審判としてプロ入りする学生も多いのだとか。

▲ストレッチから練習スタート

練習を見ていると、

「降格寸前のチームの雰囲気とは思えないでしょう?」

と、中野監督が先読みして問いかけてきます。確かに、次節、首位の筑波大学に負けたら降格するとは思えないくらいみんなが明るく活気があって、なんていうか楽しそう。

「彼らも1人になれば悔しいとか不安とかあるけど、ピッチには持ち込まないですよね」

大人だ……。

「今の子はみんな良い子ですね」

と、中野監督。その表情に少し思うところがあり、

「ちょっと生意気な子が好きですか?」

と聞くと、

「そうですね。江坂(任)や守田も生意気でしたよ」

と笑いました。

「流経大の性質上、例年、付属の流経大柏からの内部進学生が人数も多くて最大派閥になるんですけど、今の子たちは郷に入っては郷に従うじゃないですか」

「守田選手や江坂選手は取り込まれなかったんですか?」

「いや、逆に付属組も支配していましたね。付属上がりも、その他の部員もまとめて意のままに扱っていました」

さらに、

「守田に関しては典型的なボールを受けてから仕事をするプレーヤーで、ボールロストすると切り替えをサボったり、味方のせいにする節があったので、叱りやすいようにサイドバック(ベンチの目の前だから)をやらせましたね。不服そうでしたけど(笑)」

と、めちゃくちゃ面白い話を聞きながら練習を見させてもらいます。