強度は高いけどファールが一切ない紅白戦
さてピッチ上では途中で止めながらの紅白戦、いわゆるシチュエーションゲームが繰り広げられます。
片方が今季流経大が敷く3-4-2-1の布陣で、もう片方のチームが仮想筑波大の4-2-3-1の布陣。
印象的なのは、仮想筑波大をしている側の選手である清水蒼太朗選手が、
「筑波はこうしてくるから」
と、相手チームにコーチングをしている姿など、対筑波向けてワンチームでプレーしている面。そして強度を持ってやっているもののファールが一切ないのも気になりました。
中野監督曰く、そこは強く言っているところだそう。
「対戦相手も立場が違うだけで、サッカーをやる仲間だ。というのはよく言っていますね。やられそうだからといってファールなんかするな、と。ファールしてでも止めるくらいなら、一点あげて自分の力で取り返せ。と選手は伝えています」
それって一見甘いようで、実はかなり難しい要求なのでは……。
「ユニフォームを掴むような選手はしばらく使わないですよ」
やっぱり厳しかった……。
もちろん流経大に入るような選手はファールで止めることができないわけがなくて、やろうと思えばできる選手達です。でも禁じる。そこに中野監督流の指導が見えました。
目についた選手が1人、このチームの主将である渋谷諒太選手です。中盤で誰よりも走り、闘い、奪ったボールをシンプルに縦につけていける選手というのが僕の認識なのですが、この日は真ん中で立ち位置でパスコースを消すようなプレーに終始している印象でした。中野監督に尋ねると、
「彼はね、怪我明けで、本来なら筑波戦も学生年代の指導者としては出したくないんですよ。でも、彼が出るって言って聞かないので。他の選手の出るって言って聞かないのと、彼のでは、意味が違うんですよ」
この言葉の真意を本当の意味で知るのは、次回公開のインタビューを終えた時でした。
もし彼がこれからプロ入りしたら、10年、20年とサポーターに愛され、チームメートに求められる選手になることが容易に想像できる圧倒的な人間力。真面目なだけでも、人当たりがいいだけでも、優しいだけでも、責任感が強いだけでもない。全てなんです。人生何周目なんだろうという人間性。その彼の覚悟を見ることになります。
中野監督からは「少なくとも歴代で3本の指には入るキャプテン」と称され、流経大柏時代の恩師、榎本雅大監督にも「歴代No. 1キャプテン。ピッチ上に1人だけ大人がいる。こんなに選手を信頼していいのかというくらい信頼している」と言わしめた彼のインタビュー、お楽しみに。
強い流経大が必ず帰ってくる
そして、この日から4日後、筑波大学との茨城ダービーでは大学サッカーで最も観客が入るカード、そして筑波大学の優勝がかかっていたこともあり、大アウェーの中、渋谷選手もベンチに下がるまでの82分間、獅子奮迅の闘い。戦術的にも準備してきたものが見事にハマり勝利を掴み、残留への希望を繋ぎました。
結果的に翌週の最終節で敗れ2部降格が決まってしまいました。しかし、このチームはまたすぐに1部に帰ってくるだろう。それもたくさんの後のJリーガーを携えて。そう感じさせる練習見学でした。
〇流通経済大学体育局サッカー部【公式】



カカロニ・すがや