小佐野景浩氏がジャンボ鶴田の実像に迫る本連載。連載のベースとなっている小社刊『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』は、ジャンボ鶴田の没20年となる5月13日に発売されたが、早くも増刷が決まるなど、大きな反響を呼んでいる。いまなお、多くのファンの胸に生き続けている証だろう。これからもその偉大な足跡を伝えていくべく、超世代軍として鶴田と激しく戦った川田利明、鶴田とのタッグで多くのことを学んだ田上明の視点から“最強説”を考察する。

鶴田の強さを「常人ではない」と表現した田上明 

91年、いよいよ怪物・鶴田の強さは際立つ。まずは年明け早々の1月19日、松本市総合体育館でハンセンから三冠王座を奪取。前年6月5日にゴディに明け渡したあと、ハンセン→ゴディ→ハンセンと外国人の間で行き来していた全日本の至宝を、7か月ぶりに取り戻したのだ。

春には『チャンピオン・カーニバル』で9年ぶりにリーグ戦が復活。A、Bの2ブロックに分かれて各リーグの首位同士が4月16日の愛知県体育館で優勝戦、さらに2日後の4月18日のシリーズ最終戦では鶴田VS三沢の三冠戦が決定した。

まずリーグ戦のほうは川田、田上がいるBブロックにエントリー。川田との初対決、パートナーの田上との初対決が実現するという、なんとも心憎い選手の振り分けだ。3月26日の秩父市民体育館の初戦でカクタス・ジャックをバックドロップで撃破した鶴田は、29日の長岡市厚生会館で田上との公式戦を迎えた。

シングルで初めてのメインとなる田上はドロップキック、ハイブーツで先制し、捨て身のトペ・スイシーダ、DDT、デビュー当時からの得意技ブロックバスターで善戦したが、10分すぎからはラリアット、フライング・ボディシザース・ドロップ、ダイビング・ニー……と、鶴田の一方的な攻撃になった。田上も相撲ラリアット、延髄斬りで反撃に出たものの、もう技がない。それを見透かした鶴田はハイブーツからラリアット、そしてバックドロップ! 12分38秒でケリをつけた。

▲鶴田にとって田上との唯一のシングルマッチで貫録勝ち

「あそこでもう少しできるといいんだけどね。でも、田上は成長したよ」と鶴田は余裕のコメントだった。

現在、茨城県つくば市茎崎で『ステーキ居酒屋チャンプ』を経営する田上は、鶴田との唯一のシングルマッチについてこう語る。

「やってて、嫌になっちゃうような人なんだよね。攻めてても、平気な顔して立ってきたりするから“効いてんのかよ!?”って、攻めてて嫌になっちゃう。“俺が疲れてるのに、この人は全然疲れてねぇ。いつになったら疲れるんだろう?”ってね(苦笑)。精神的に嫌になっちゃうんだよね。技としてはハイニー(ジャンピング・ニーパット)がけっこう痛いんだよ。バックドロップは身長があるし、身体が柔らかくてけっこう反るから効くしね。やっぱり、あの人は常人ではなかったよ」