日本からの仕送りを一緒に食べた鶴田とハンセン

「当時のジャンボは240ポンドぐらいで、そんなに大きいわけではなかったが、アスリートとして素晴らしかった。特に脚力が凄かったな。アマチュア・レスリングでオリンピックに出場したキャリアもあったし、俺より基本がしっかりしていたから、ジャンボのほうが扱いは少し上だったと思う。ある試合で、俺とジャンボが同時に攻撃をかわそうとしてリープフロッグ〔相手のタックルを飛び越えるムーブ〕をやって、空中でお互いの顔面をぶつけてしまい、ふたりとも前歯を折ってしまったことがある。それもいい思い出だよ」と、ハンセンは笑う。

そして、一緒にジムで練習をしていた時の印象をハンセンはこう語る。

「ジャンボは、身体は細かったけれども、グレコローマン・レスリングの選手だったからなのか、上半身の力が凄く強くて、ジムに行くと俺よりも重いバーベルを持ち上げることができた。それが凄く印象に残っている」

そしてテリーがいない時は同じ車でサーキットを回ることもあった。

「車中で“ああしたらいいんじゃないか”“こうしたらいいだろう”ってよく話をしていたんだ。もっともジャンボの英語はかなりブロークンだったから、コミュニケーションを成立させるのはお互いに努力が必要だったけどね(苦笑)」

▲青春を謳歌したふたりだが、三冠タイトルを巡り火花を散らす

全日本から仕送りのインスタント・ラーメンが届くと、ホリデーイン・イースト308号室の鶴田の部屋で一緒に食べた。

「醤油味、塩味は好評だったんだけど、味噌味は匂いがきついから苦手みたいで、味噌ラーメンは僕が食べてましたよ」とは、かつての鶴田の思い出話だ。

戦うだけでなくタッグを組むこともあった。8月9日のアマリロで初めて組んだふたりは、ザ・ファンクスのインターナショナル・タッグ王座に挑戦している。

「美味しい料理にするためには、素材となるヤングガイにいろいろ味付けして、調理しなければならないからね。メインイベントで戦うにはまだまだ経験不足だったが、ヤングガイのスタンとジャンボにそういう機会を与えることで、他のレスラーたちにも“頑張れば上のカードが組まれる”ということをわからせたかったというのもあったよ」と、ふたりを挑戦者に抜擢したテリーは言う。