根尾が二刀流に挑戦すればチームの魅力も高まる

根尾という選手は、ファンの皆さんもご存じのとおり、本当に真面目で練習熱心。あれだけの若さで自分を律することができる姿は本当に感心します。とにかく、その才能、ポテンシャルの高さも誰もが認めるところでしょう。

岐阜県飛騨市出身の根尾は、すでに中学校3年生時に最速146キロを計測し「スーパー中学生」と呼ばれていたそうです。

名門の大阪桐蔭高校では1年夏からベンチ入り。2年春からは主力となり、投手・遊撃手・外野をこなし、3年夏まで4季連続で甲子園の土を踏みます。そのうち2年春、3年春、3年夏では全国優勝を果たすなど、千葉ロッテマリーンズにドラフト1位で入団した藤原恭大らとともに、“大阪桐蔭最強世代”の一角として、いや、日本中が注目する“甲子園のスター”として君臨したのです。

2018年のドラフトでは中日ドラゴンズ、北海道日本ハムファイターズ、読売ジャイアンツ、東京ヤクルトスワローズの4球団が1位指名。与田剛監督の強運で交渉権を獲得すると「遊撃に専念」を公言してプロの扉を叩きました。

その根尾ですが、今季は開幕から1軍に定着し、外野での出場機会も与えられています。ただ、今後はどう使っていくべきでしょうか。僕は、このまま外野で起用し続けていくなら、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平のように二刀流に挑戦してもらいたいのです。

今、国内で二刀流の可能性を持つ選手といえば、根尾以外にはすぐに思い浮かびません。速球は今でも150キロ近くを計測するはずですし、まだプロの肉体に変貌を遂げているとは言い難いのですが、その身体能力の高さに関しては、誰もが認めるところでしょう。

僕は選手として「中から見る中日ドラゴンズ」と、解説者として「ネット裏から見る中日ドラゴンズ」が、こんなに違うものかと今、実感しています。ネット裏の解説者という立場から見れば、興行面への意識がおのずと高くなるので、今の中日ドラゴンズは「魅力」や「話題」という視点で他球団と比べると、少し見劣りしてしまうのが本音です。

その意味でも、根尾が二刀流に挑戦すれば全国区の話題になるのは確実。具体的にいえばオープナー(本来、中継ぎや抑えの投手が先発し、短いイニングをつないでいく起用方法)の試合をつくり、そこに根尾を当てはめていけばいいと考えます。ファンからすれば、これほど魅力的なことはありませんよね。

僕は現役時代、契約更改の席で「お客さんが球場に足を運び、その収益が君の給料になっているんだ」と説明されました。もちろん、活躍すれば年俸を上げてもらいたいと思うのですが、基本のベースになるのは、まさに「お客さんに足を運んでもらうこと」です。

時代が変われば、おのずと状況に応じて、組織の在り方が変化していくことは理解しています。おそらく、会社員の世界であれプロ野球の世界であれ、接し方にしても指導法にしても、現状に応じたアプローチの仕方があるはずです。

ただ、ほんの少しだけ不変な部分が残されていても邪魔になることはないでしょう。それこそが冒頭で綴った「危機感」です。

僕は中日ドラゴンズ以外のチームを知らないので、なんとも言い難い部分はあります。でも、中日ドラゴンズの「良き伝統」であり、受け継がれていってもいい部分ではないかと思うのです。

僕が本当に働けたのは、2008年から12年の5年間だけだったのではないしょうか。それでも、僕に期待をかけ、2013年のトミー・ジョン手術を受けた以降も7年間、契約を結んでいただき、ユニホームを着させていただき、大好きな野球をさせていただいた中日ドラゴンズ球団。そして、こんな僕を応援してくれたファンの皆さんに対しては、感謝の気持ちしかありません。

再び中日ドラゴンズに黄金時代が到来する日を切に願い、微力ながらサポートしていきたいと思っています。

▲中日ドラゴンズが復活することをファンは信じ、願っている! 写真:中日新聞社