コント批評は「お笑いの神様へのノック」
こうして独自のポジションで、多くの芸人仲間やスタッフからも評価を受けているう大。そんな彼の頭の中を探れるのが、新刊『偽りなきコントの世界』だ。ここで述べている批評は、あくまでそのコントを見て「う大がどう思ったのか」。その一点である。
「“お笑いにおいて批評は野暮だ”という意見もわかるんですけど、僕からしたら、別にどっちでもいいというか。特に僕がやってるネタなんて、批評してくれる人がいた方が、むしろいいし、その価値がわかってもらえるのかなって。お笑いの楽しみ方はいろいろあっていいと思うので、この本も自分の意見を書いているだけなんです」
そもそも批評を始めたのは、どういう経緯なのだろうか。
「お笑いの神様への、ちょっとしたノックというか。こんなことやってもいいんですかね? みたいな。誰かに怒られないかなとか、何言ってんのコイツと思われるリスクもあるとは思ったんですけど、誰もしていないことだし、やってみるのも面白いのかもと思ったんです。いざ出してみたら、自分の努力以上の反応があって驚きました。今まで、いろいろ生み出してきたけど、こういうことは1回もなかったし、意外と評判がよかったんです。
僕の中には、求められることをやりたい感情があるんですよ。本当は自分のネタで反応あるのが一番いいんですけど、そういうところでは反応を得られず……。だとしたら、“求められるがままにやってみるのもいいのかな”って」
演劇やコントなど、う大が創り上げる作品は、数多くの芸人が賞賛している。「岸田國士戯曲賞」最終候補に挙がるなど、評価する声はたくさんあるように見えるが……。
「人から見たら“十分反応もらってるじゃん”と思うのかもしれないですけど、どちらかというと、“玄人受け”が付きまとっていて、そこへのコンプレックスはあるかな。“本当はもっと面白いはずなんだけど、なんでこんなに注目されていないのかな”とは思いますね。ただ、ようやく最近、少しずつリターンがもらえるようになってきたのかな」
自ら道を切り開き、多彩な仕事をしてきたことが好転し始めている。そんななかで、今春『キングオブコントの会2023』に出演。コント「亀教」の脚本を書いた。
「結局、自分が舞台をやったり、漫画を書いたりしたことが生きているなと思いました。漫画を描いたことで、劇団の演出も変わっていったし、それがテレビコントにも生かされたので、すべてがつながっているなって。コントのセット、音楽や衣装は、劇団で慣れているのでイメージが伝えやすかったですし、編集も口出しさせてもらったんですけど、そのあたりは漫画を描いていたときの感覚が生きましたね」
インタビュー中、自分が思い描いていた理想の芸人とは違う――。そう述べたう大だが、今の仕事のかたちが「性に合っている」という。
「僕の場合、“楽なほうにいけるな”と思うとロクなことがないので、枷があるほうがいいと思っています。脚本を書くのはしんどいし、満足度との戦いだったりもするんですけど、自分ルールで決めていけるし、考えていけるので、そのほうが自分の性には合っていると思うんです。
僕の才能では、天下統一は絶対にできない。ただ、天下統一のところまで上がっちゃうと、そこで求められることによって消費される才能とか時間があるじゃないですか。例えば、バラエティの収録中に、自分の持っているものを全部ぶつけなきゃいけない仕事は、僕には向いていないんですよ。 だとしたら、自分の時間を長く使って、“こんなすごいものができるんです”と見せられる、今のようなかたちが合ってるのかなって」
う大の多彩な活動はバラバラのようで、すべてつながっている。これからも彼の才能が十二分に発揮される場で、煌めき続けるに違いない。
(取材:浜瀬将樹)
〇偽りなきコントの世界[ KADOKAWA]