自分たちは劇場を意識している漫才師
――僕はもともと漫才師としてのコマンダンテさんが大好きなんです。会話術だけで漫才を構成するのって難しくて、それで笑いを生み出すのってもっと大変だと思っていて、東京に来られる前は、東の囲碁将棋、西のコマンダンテって思ってたんですが。
石井 (笑)うれしいです。
――この本には、お笑いをキーワードにコーヒーの好みを決めるフローチャートがあるんですが、石井さんはコマンダンテというコンビをコーヒーに例えるなら、なんだと思いますか?
石井 僕自身の気持ちとしてはブレンドなんです。始めた頃って、誰かに向けてというような気持ちではなくて、単純に自分たちが面白いと思うことをやっている。それが劇場に出だしたり、賞レースで結果を出したりすると、そのレースに向けてとか、劇場だったらお客さんに向けてとかに意識が向いてくるんです。それぞれお客さんの層が違うので、例えばNGK(なんばグランド花月)だったらNGKのネタがあるし、ルミネ(ルミネtheよしもと)にはルミネのネタがある、これは僕らが吉本興業にいるからやなって思うんです。
――幅広い年齢層を笑わせないといけないですもんね。
石井 他の事務所の若手だったら、M-1とかの賞レースだけを意識して漫才やってもいいと思うんです、でも、コマンダンテとしてはもちろんそこも考えるけど、まず劇場に立つ、ということを念頭に置いている。だから、いろいろなもののブレンドになるような考え方をしなきゃいけないな、という理想でやってますね。お客さんが違うといってもスタイルを変えない芸人さんももちろんいます。ただ、僕らはM-1だけを意識してネタを作って、それをNGKとかルミネで披露してスベって、ヘラヘラできないんですよね。
――めちゃくちゃカッコいいですね…! 感動しました。コマンダンテさんを好きになった理由が今の答えに詰まってる感じがしました。
石井 (笑)もちろん、自分たちのスタイルを曲げずにやるカッコよさもわかるし、それに甘えたくないなって気持ちですね。
――芸人としてのスタンスがよくわかったような気がします。ちなみに、コマンダンテさんがブレンドだとして、“味が近いな”と思う芸人さんはいますか?
石井 それこそアイロンヘッドですかね。
――おー! なるほど。
石井 漫才も器用やし、コントも面白い、歌ネタもできる、僕ら以上に全方位に向けてやってるし、それぞれの劇場でお客さんを意識してやってるし、賞レースではちゃんと賞レースのネタを披露してるって思います。
――正直、アイロンヘッドさんはもちろん知ってたんですけど、ナポリさんが悪意なく先輩でもズバッと言っちゃうタイプだって想像できなくて。ただ、石井さんもわりと飲み会とかで何も言わずに帰っちゃうと聞いたので、もしかしたら似てるところがあるのかなって。
石井 (笑)そうかもしれないですね。
――まったくコーヒーと関係ないんですけど、石井さんが思う、“この芸人、世間の評価が追いついてないな”って思う芸人さんはいますか? ……すみません、ちょっと急にお笑いナタリーみたいなことを聞いちゃって。
石井 いえいえ(笑)。そうですね、それこそほんまにアイロンヘッドちゃいますかね? ちょこちょこメディアには出てるけど、爆発的な売れ方はしてない。でも実力は申し分ない、人柄もいいし、悪い部分が僕から見て全くないんですよね。
――たしかにずっと面白いですもんね。でも、それはコマンダンテさんも同じで、ずっとお二人に漫才を続けてほしいなって思うんです。賞レースができたことによって、良いことのほうが多いけど、そこを意識しすぎて肩を壊しちゃうコンビが多いのも事実ですよね。なので、石井さんが「劇場を意識している」と言ってくれたのがうれしかったです。例えば、昨年のM-1予選での洋服屋さんのネタとか、長くやればやるほど面白いだろうなと思って。
石井 たしかに、あのネタ本当はもっと長いんです(笑)。それをM-1用にしてて。
〇11/12 [東京] コマンダンテ【準々決勝ネタ】[M-1グランプリ]